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『心の花』2016年12月号掲載歌から

2016-12-10
日向なる坪谷の生家に集ひたる六十六回牧水祭へ
生くるとは歌刻むこと牧水の歌碑の「おもふ」に酒の沁み入る
(『心の花』今月号に掲載された自作短歌)

月初めになると、大学のメールボックスを何度も覗き込むのが癖になってしまった。それは『心の花』当月号を、どれほどにか待ち遠しく思っているからである。3ヶ月前の月末25日締切で提出した短歌8首が、何首選ばれて掲載されているのか?そしてどの歌が掲載されどの歌が落選したかを知ることに、この上ない興味が湧いているからである。自作短歌に対して撰者の視点で評され掲載の可否が決定する、その差は如何なることかと自ら考えることに、歌の上達への機微がある。自己満足であってはやはり人の心を動かす歌は詠めず、こうした落選という刺激を受けてこそ次なる階梯に足を踏み出せるということだろう。

さて今月号に撰ばれた歌は、9月17日に初めて参加した「牧水祭」(若山牧水の命日)での詠歌連作である。冒頭に記した二首目は、生家の前で行われた歌碑祭に参列した際の感慨を詠んだもの。歌碑には「をとめ子のかなしき心持つ妻を四人子の母とおもふかなしさ」という歌が刻まれており、献酒が行われた際にその酒が歌碑の文字の「おもふ」に沁み入り、牧水が酒を飲んでいる顔が僕の脳裏に浮かんだという感慨を詠んだものである。当該の歌碑は「夫婦歌碑」と呼ばれるもので、歌人でもあった妻・喜志子の「うてばひびくいのちのしらべしらべあひて世にありがたき二人なりしを」も仲睦まじく刻まれている。「歌を詠む」ということは、まさに人生を「文字として刻みつける」ことでもあろう。生涯に多くの「歌を刻んだ」牧水の思いと、その酒好きな性分が偲ばれ、まさに「おもふ」の文字が美味しそうに焼酎を飲むかのようであった。

掲載されてあらためて9月17日が思い返される
あの日から流れる穏やかな感情
日々を「生くる」中で今日もまた「歌を刻む」のである。
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