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寄席に興じる父の七癖

2016-09-06
「紙切りの回る体にシンクロす寄席に興じる父の七癖」
(『心の花』2016年9月号 中村佳文 掲載歌)
寄席を題材にした短歌が続きます・・・・・

毎月初めに『心の花』(短歌結社「竹柏会」の雑誌)が届くと、何事をもさておき封を開き自分のどの歌が掲載されたかを探すのが楽しみだ。今年3月から毎月8首の歌を投稿しつ続けているが、概ね半分の4首から5首の歌が選ばれて掲載されることになっている。どの歌が採られて、どの歌が落とされたか?それを控えとして保存した歌稿と見比べて、自己の歌の優劣を考える貴重な振り返りの時間となる。今月9月号には「病後の父」を題材にした歌を投稿した。親が病となると、遠く離れて生活している身としては心配が尽きない。だが、約1年間という期間を経て、父の病が回復傾向を見せ、体力面でも逞しさが戻ってきたと感じていた。そんな4月から6月の頃、僕の趣味もあって、実家からほど近い上野鈴本演芸場に父母とともに足を運んだ。その折の事を題材としている。

懇意にする落語家・金原亭馬治さんが鈴本のトリとなって登場する直前に、「色物」として「紙切り」の演芸が行われた。「紙切り」とは、様々な影絵を語りながら紙を切って仕上げるという演芸で、特にその場でお客様からの要望に応じた対象でも、見事に切り上げるところに見せ場がある。その「紙切り」が作品を仕上げる際に語りで客を楽しませると同時に、必ずその体が何となく回るように動いている。ネタとして披露されることもあるが、どうやらその「回る体」が止まってしまうと、上手く紙が切れないのだと云う。その「紙切り」演芸を観ている時、席を並べた父に意識を向けると、何となくその「回る体」に綿密に合わせるかのように「体」が動いている。これはまさに「シンクロ」という語彙が的確な表現ではないかなどと考えたのが、この歌を作る契機となった。幼少時から父の動作を観察していると、相撲・プロレスなどの格闘技はもとより、コント55号やザ・ドリフターズなどのコントを観ている際にも、当時者同様に身体が動く癖のあることが印象的であった。どうやら僕自身も同様の癖があるらしく、中高教員だった頃に生徒に指摘をされたことがある。そのような癖の”遺伝的”継承も含めて、こんな歌を詠んでみたくなった。

上野鈴本界隈での歌がもう一首掲載されている。
「和食なら体によしと勧めてはあんみつ老舗を父は選べる」
餡子ならば愛嬌もあるが、甘いものの過剰摂取には今後も要注意であるという願いを込めて。
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