創造的絵本群読のススメー学校図書館司書講習③
2016-08-20
複数人で絵本の魅力を探り当てて多重な解釈と創意工夫で伝える表現へ
協働性と調整力そしてまた何より表現者が楽しむということ
学校図書館司書講習3日目。昨日に引き続き「子どもと本を結ぶための方法」として、「読み語り」ワークショップを実施した。世間では「読み聞かせ」という語が一般的であるが、対象者に「聞かせる」というやや強制的で「上から」な語感が適切ではないと考えて、僕は「読み語り」という語彙を使用し、世に広げようという意図がある。語感の問題のみならず実際に、「大人が子どもに読んでやる」といった感覚でしか捉えられないことが大きな問題であると思われる。よく「絵本は何歳ぐらいまで読んで”やれ”ばいいのですか?」という質問を受けることがあるが、もとより年齢に制限などがあるわけでもなく、高校生でも大学生でも大人でも老人でも絵本を語り合う機会を持つべきであろう。読む側も聴く側も受け身になることなく、自らが楽しくなるような機会となれば、絵本によって精神的ね面が癒されることも多い。「読み聞かせ」のあり方として「感情を込めずに淡々と読む」という点も、巷間で強調されやすいことの一つであるが、むしろ読み手が存分に多重な解釈に基づき、創意工夫を持って読み語ることで様々な効用を生むものだと僕は考えている。
この日は、4人一組で持参した推薦絵本をまずは「読み語り」し合う「下読み」を行い、組んだ班の人々がどんな絵本を持参したかを共有する。その中から1冊を協議の上で選定し、創造的群読構想を構想していく。地の文(語り手)・登場人物・擬音語・擬態語などの文体の成分によって読み分ける脚本を作成し、その上で効果的と考えれば本文の改編やリフレイン(繰り返し)・ユニゾン(複数人読み)など、複数人で朗読をする効果を存分に活かせるよう検討する。場合によっては効果音や小道具なども使用する。実際に構想が始まると、各班とも実に楽しい創意工夫うをしていて、受講者の熱意が感じられてくる。絵本の魅力を引き出すために、その解釈を話し合いでき得る限りの工夫が凝らされる。中にはお昼休みに近所の100円均一店に出向き、装飾用品を購入した班さえあった。工夫のみならず、絵本の持つ構造を十分に捉えて、語り手と登場人物の関係や場面に即した立体感など、本の世界をライブ感を持って多様に表現する機会となった。「聴き手」そのものを「読み手」側に引き込むという工夫がある班もあり、「読む・聴く」は相互作用で一体化した時に、さらなる共感性が生み出されることを、多くの方々が実感したであろう。
子どもたちが見て楽しい創造的絵本群読
大人が楽しんで何がいけないのであろうか
何事にも「遊びやせむと 生まれけむ」が、このくにには足りな過ぎる。
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