口頭発表の妙
2016-05-23
時間内に的確に正確に伝える研究発表の話し方と質疑応答のあり方
そしてまた話芸のプロたちの競演
2日間の中古文学会に出席して、自分自身の課題が何処にあるかを再認識した。平安朝文学と現代に繋がる糸を辿り、和歌を中心に日本語日本文学の表現の深層を探るということ。そしてまた古典そのものの意義を「国語」という教科の中で、適切に学べる環境を整えていくこと。何より「文学」というものの価値を再考すべく、社会全体に訴え続けること。「文学」を的確に研究した上で「国語教育」を語るということ。研究発表やその質疑応答、そして書店の出店を見回りながら、自身のことをどこかで相対化し続けた2日間であった。これまでの道、これからの道を見据えながら。
そんな中で、いつも気になるのが口頭発表のあり方である。「音読・朗読」の問題を考えてからというもの、この視点はいつも僕の問題意識の中にある。伝わる話し方、そして的確に正確に読み、時間内で効果的に語るということ。「国語教育」系の研究学会に比して、概して「文学」系の学会は、この口頭発表そのものへの配慮が薄いように感じている。日常の講義でも持ち時間は90分と決まっているゆえ、その内で如何に効果的な内容にするか。口頭発表でもその主旨が的確に伝わる口頭表現を考えるのが、日本語日本文学を研究する立場として重要であると思う。また「枕詞」という文化があるせいか、質疑応答でもなかなか質問の核心を述べない方も目立つ。これが「文学」系の流儀だと僕も思っていたが、以前にそのような質問を「国語教育」系の学会で行ったら、「時間に限りがあるので端的に質問をせよ」といった叱責の言葉をいただいたことがある。「人文学」への風当たりが社会全体で逆向きな中で、僕たち研究者が考えねばならないのは、内容とともに口頭発表での訴え方なのかもしれない。などと考える前に、「文学を研究せよ」と言われそうであるが、こうした意識の両立が僕自身の生きる道であるとも思う。
研究学会後は寄席に立ち寄る
懇意にする落語家さんの主任高座
時間内で笑いをとり、また寄席まで足を運んでもらうよう効果的な口頭発表であった。
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