創作的なオノマトペとは
2016-05-15
「ワン」なら犬、「ニャー」なら猫「サッと」は俊敏、「ダラダラと」は緩慢
オノマトペ(擬音・擬態語)で他者に的確に意味を伝えるには・・・
長嶋茂雄さんはカタカナ英語もさることながら、オノマトペ使用の天才でもあろう。Web記事で名語録を読んだことがあるが、「サバという漢字はどう書きましたっけ、そうですねいわゆる、魚偏に”ブルー”でしたでしょうかね」などと、カタカナ英語を真剣に語るのことには笑いが止まらない。オノマトペはというと、打撃指導で素振りの際に、「もっとビュンとバットを振る!ビュンだよ」などと言って愛弟子である松井秀喜さんに個人指導をしていたというのは有名な話だ。自らも動作を繰り返し打撃の極意たる感覚的な部分を、オノマトペを添えて相手に伝えるという上では実に素晴らしいコミュニケーション能力であったということであろう。それは松井秀喜さんが日本のみならず、メジャーの中軸打者としてワールドシリーズでも活躍したことからも証明される。身体表現全体を伴って発せられるオノマトペは、長嶋さんの例のように大変有効であるということがわかる。
それが書き言葉、特に創作的で短詩系たる短歌の場合はどうであろうか?三十一文字の定型の中に、せいぜい一句五文字程度のオノマトペを挿入すると、どうしてもその真意が伝わりづらいことを実感している。同じオノマトペでも発声の仕方によって、その趣旨にも変化が生まれる。だがやはり現代は「書き言葉」が前提になっているゆえに、よほどの工夫がある創作的なオノマトペでないと真意は伝わりづらい。前後の言葉で補おうとはするが、言い過ぎて説明的になっても短歌として趣を失う。そのあたりの匙加減について、推敲に苦闘することもしばしばだ。それならば「オノマトペ」という語彙選択をやめればいいわけだが、どうも「音声表現」を研究しているせいもあって、そこに自己の特徴を見出したいなどと欲目が出るのである。若山牧水の短歌などは、音律的にも流暢に聞こえるという指摘もあるが、近代短歌が「音声言語」から「文字言語」に移行し偏向してきた流れということにも大きな興味を覚えるのである。
自らのすべてが表現主体
あらためて「声」の重要性を思い知らされる
長嶋茂雄さんのあの甲高い声に、多くの人々が魅了されるのにも必然性があるのだろう。
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