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故郷と土地・人の縁

2016-04-24
故郷への思い
人それぞれに様々な
語り合ってこの先を模索する

大学時代に所属していたサークルで、3年次に幹事長を経験した。今思えばその際に、勉強以外の様々なことを学んだと振り返ることができる。ちょうど新年度の今時分であった、新入生歓迎会があり、高田馬場から浜松町まで会員の参加者たちで山手線に乗る機会があった。事業を企画した幹事は渋谷周りを主張したが、僕は頑なに上野周りで行くべきと主張した。果たして幹事長の意が尊重されたのか、上野周りが選択されたということがあった。後に実際の所要時間を確認すると、明らかに渋谷周りの方が早いことに気がついた。だがしかし、僕はそれでよかったと思っている。僕自身の故郷である田端あたりから日暮里・上野・東京に至るまでの車窓の風景は、山手線の中での見応えのあるものだと自認しているからだ。新歓行事後に新入生が会誌に感想を書いていたうちに、「幹事長の際立った故郷愛を感じました。」というコメントがあったのを記憶している。そうなのだ、僕は故郷である東京の下町を頑なに偏愛しているのだと、この時から思っており今に至るのである。

現在、東京で第一線の仕事をしている方と食事の席をともにした。彼は僕の赴任地の出身で、昨秋開催した僕の公開講座「古典落語に学ぶ」に来場してくれた。その折からの縁で友人の落語家さんとともに、親しき関係が続いている。話しているとどうやら僕と同様に、故郷への思いが強いのがわかる。将来的には故郷に戻り、地方として豊かな生き方ができる方策に貢献する仕事がしたいと語る。それを聞いて僕自身も、かくあるべきかということを深く考えさせられた。元来、僕も東京の下町情緒の残る谷中・根津・千駄木が大好きである。いっときは「文士村」と呼ばれたこの風土と文学者に関する研究をしようと思ったこともある。最近は聊か子規に出発する近代短歌を考えようとしているのも、その延長である。このような思いもありながら同時に、現在居住する地方への愛着も確実に強まっている。食料自給率が高く、豊かな自然の中で感性を刺激されながら生きる。そしてまた、上京をした際には故郷への思いに浸る。若山牧水がそうであったように、一生の中でいくつかの愛着する土地を持つというのも、心豊かに生きることの証ではないかとも思うのである。

「宮崎のワイン豊かに酌みゆけば
土地の縁とは人の縁なり」
(俵万智さん「宮崎百人一首」の短歌より)
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