新刊『悩ましい国語辞典』(時事通信社)から

2015-12-10
「悩ましい目つき」「悩ましい問題」
「このカレー、やばいです。」
「この使い方で大丈夫」・・・・・

昨日紹介した先輩・神永曉氏の御高著『悩ましい国語辞典』(時事通信社2015年12月10日)には、長年辞書編集者として日本語の語彙に携わって来た方ならではの話題が満載である。しかも所謂「学習語彙」といった類の聊か高尚なものばかりではなく、むしろ老若男女の使用する日常語彙が数多く見られて興味深い。書名の如く全体が『国語辞典』の体裁を成しており、五十音順に目的の語彙を繰ることができる。また若者を中心に使用される「新しい使い方」に対しても寛容であり、それは用例を根拠に掲載語彙の選択や意味解説を施している『日本国語大辞典』の編集方針にも通じており、過去を遡れば現代の若者が使用する如き用例にも出逢えるという発見を根拠にしている。例えば「まじ」などという語彙使用は、明らかに「若者言葉」だと断じる向きも多いと思うが、これは江戸時代から使用されているといった内容が紹介されており、現代の年配者の偏見であることがわかる。ことばは「生きて」いるのであり、いつの時代もあらたな活用・展開が施されて然りなのである。よって年代を問わず自己の語彙使用に敏感になることが肝要であり、辞書を日常から楽しむといった感覚が求められるということを考えさせられる。

冒頭に記したのは同書に掲載された中から、この日の1年生(134名)を対象にした講義で問いを投げ掛けた語彙である。「悩ましい」に関しては、ほとんどの学生が「悩ましい問題」といった文脈での使用をすると回答したが、両方使用するとしたのが4名ほどで稀少であったが、その中には「官能的」といった語感を口にする者もいた。「やばい」に関しては、「辞書の解説のように意味を記述せよ」と問い掛けると、品詞は形容詞と答える者も目立ち、多くの者が「危険やあぶない状態が予測されること。」といった方向性の回答を記した。「美味しい」などの「よい評価」との区別には自覚的であるようで、教員養成学部であるからか日常語彙に対しても、それなりなりな感覚があることが再確認できた。「大丈夫」に関しては日常使用場面を想定して、2人の会話を記述してもらったが、やはり聊か曖昧な意味で使用している現状も看て取れた。スーパーでバイトの学生がレジで「袋は大丈夫ですか?」と言っていたことや、繁華街の客引きの方が「カラオケ大丈夫すか?」と問い掛けてきた僕自身の体験も話して、使用場面によっては年代によって解釈が異なり、失礼にあたる可能性もあるので、バイトなどでは十分に注意すべきと促した。

教師たるや
まずは自らの言語感覚に自覚的で敏感たれ
大学で学ぶ意義の一端も露わにできたのではないかと、先輩の御高著に感謝。

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