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2015第3回公開講座「読み語りの力」

2015-10-04
呼吸と声と文体と
「届く声」の正体は「息」である
一期一会のLIVE創作に酔い痴れるひととき

今年度第3回公開講座テーマは、「読み語りの力」である。この地にいらして3日目のとなる下舘あいさん(女優)と下舘直樹さん(ギタリスト)をお迎えして、「小説・絵本を読む」といった内容とした。冒頭お二人の挨拶代わりに詩『おぼえておいて』の朗読。僕たちは「風の中で耳にした声」をあらためて聴いて、ことばを語り継ぐことの掛け替えのない尊さを実感するのである。次に「小説冒頭文の力」というコーナー。あいさんは芥川龍之介『蜘蛛の糸』、僕は漱石『草枕』冒頭文を題材に朗読とトークを展開。芥川の文体というのは、実に「息」と合致して句読点が施されているので、大変読みやすいとあいさん。漱石は漢詩・俳句にも才能を発揮した文豪であるゆえ、語の音律にも敏感で「智に働けば角が立つ・・・」といった七五調の軽快な音律のある文体で小説を書き出している。明治・大正・昭和の文学においては文語体から口語体へ様々な言語的変遷もありながら、音律も大きく変化して来たことだろう。比較の意味で今年の芥川賞作家である又吉直樹さんの「火花」の冒頭一部を朗読で僕が紹介したが、やはり「書き言葉」であり「文字全盛の時代の文体」になっている印象だ。それでも「又吉さん御自身が読んだら合う文体ですね」とあいさんのコメント。

講座の後半は、あいさん&直樹さんの真骨頂である『リトルツリー』。絵本作家・葉祥明さんの作品を、見事な語りでその場に再現してくれる。表情と身体の動きに息づかい、いずれも自然の中の生き物すべてが共存しているということを体現しているようなあいさんの語り。そして自然という概念を超えて優しく包み込むようなギターの調べが声と交響する。「あなたはあなたになるために生まれてきたのよ」という生物存在の根源に語り掛けるようなことばが、聴く者のこころに柔らかく囁いて来る。100年単位の時の流れ、人間と云う存在の醜さ浅はかさ、そして樹木をはじめ動植物の素朴で素直な生きるという歩み。だいぶ久し振りにこの作品の語りを聴いたので、僕自身も自らの存在如何に深く思いが及び、ついつい涙腺が緩んでしまった。その後、会場の方々から多くの賞讃とともに、お二人への興味深い質問が為され、生きる者としての豊かな「対話」が為されたのであった。

声は限りない創造性を持っている
そして「語り」は毎回違った「生き物(LIVE)」にほかならず
あいさん&直樹さんとともに、また新たな「生」が僕自身の中にも芽生えた気がした。
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