「絶対」「全く」ー語法の恐怖
2015-05-15
「・・・ない」の前に付く副詞「まちがいなく・・・」「全面的に・・・」
100%など人類史上「絶対に全くない」
自らの日頃の行動を省察すれば、いとも簡単に気付くだろう。「絶対」が絶対ではなく、「まったく」が全面的でないことに。あくまでそれはむしろ願望に過ぎず、「絶対」「まったく」ではない可能性を示唆している。とりわけ議論の中において、対立意見にこうした副詞の語法で答弁するのは、「絶対にまったく答えになっていない」のである。対立する側に対しての「全面的否定」は、自らの脆弱性を露呈しないがために隠れ蓑を着ているに過ぎない。確固たる信頼というものは、むしろ対立意見の可能性を認めて、そのような場合には具体的にどうなるかを慎重に緻密に知的に構築しているということであろう。
「絶対」を辞書で引くと筆頭に、「他に対立するものが無いこと。」(『新明解国語辞典第6版』)とある。その立場は確かであるかといえば、むしろ相対化されない偏向性が際立った脆弱な立場となることは、歴史を紐解けばいくらでも容易に理解できる。換言するならば、「絶対」という立場をとった時点で、対立側を排除するわけであるから、幼稚で妄信的な思い込みを恣意的に持続するための語法であるのは明らかだ。まさに「裸の王様」の逸話のように、「絶対にまったく裸ではない」という語法によって妄信するための環境整備をしているに過ぎない。そのような「裸の王様」”語法”が、頻用される情勢を鑑みるに、誠に究極の憂いを抱くことを禁じ得ない。
「当然・・・ではない」「・・・は当たらない」も同様に
言葉は発話者の思考を表面的に炙り出す
人文学研究は、それほど現実に活用できないなどと舐めてもらっては甚だ遺憾である。
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