「やさしい心の持ち主は」詩心がもたらす日常
2015-01-29
「いつでもどこでもわれにあらず受難者となる。
何故って
やさしい心の持ち主は
他人のつらさを自分のつらさのように
感じるから。」
「夕焼け」(『吉野弘詩集』ハルキ文庫1999より)
詩歌を読むとはどういうことだろう?単にその文字面から何かを想像するだけのものだろうか。「読みを深める」といった用語が、国語教育に頻繁に使用されるが、その「深まる」とは何か。まさしく「自己」を起ち上げて、その詩歌から読み取れたことと重ね合わせて、共感や反発を覚えるということになるだろうか。日常生活には、様々な人の「こころ」が往来するものだが、その機微を、誰にも気付かない的確なことばで捉えたものが詩歌ということになろう。ふとメールなどに「詩心」ある内容が刻まれていたりすると、深い共感と穏やかさを感得できるものである。
Twitterの情報によると、「NHKクローズアップ現代」で詩人・吉野弘の特集が放映されたという。かねてから吉野弘の詩には大変共感を覚えており、ここ最近、授業や講座で読むことも多かった。冒頭に記したのは「夕焼け」という詩の一節だが、電車の中で幾度となく老人に席を譲る「娘」の「受難者」としての悲哀を語るものである。「やさしい心の持ち主」とは、どういう人だろう。それは「他人のつらさを自分のつらさのように」感じる人であると言説化されている。日常でも僕たちは、様々な「やさしい心」に触れ合う。だが、その他者の「やさしい心」を、粗末にしてしまうことがないわけでもない。翻って、その「やさしい心」を受け止めたり受け止められたりすれば、実に平和な気持ちでこころ穏やかな日常になるということだ。
詩歌のことばこそ人生に必要なのだ
それは生きる活路が満載されているのである
嘗ては、為政者が詩歌を愛好した時代もあったのだが・・・
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