平家落人鎮魂の声
2014-12-14
本年度公開講座第7回目『平家物語』を扱う第2弾
那須与一「扇の的」への思いもあらたに
なぜ『平家物語』を声で語るのか。元来琵琶法師の語りによる口承文芸ゆえに、やはり「声」にしてこそ初めてその感興も味わえるというものだ。そしてその「声」で読むことこそ、「平家鎮魂」の「意味」を持つことにもなる。この日は、「扇の的」を神明に誓い決死の覚悟で射た那須与一の段と、息子ほどの年齢である敦盛を討たねばならない熊谷次郎直実の苦悩を描く「敦盛の最期」の段を扱った。
九州には、「平家落人伝説」が語られる地域も多く、宮崎県山間部の椎葉村(椎葉”平家落人伝説”)がその一つである。壇ノ浦以後、その村に多く平家落人がいることを知った源頼朝は、那須与一に討伐命令を出すが、与一はこのとき病気で動けず、弟の大八郎が代わりに向かったという。しかし、いざ大八郎が椎葉村に赴いてみると、平和な農耕生活をしている落人らに逆心の欠片も見えないことから、頼朝に「平家残党はすべて討伐した。」という虚偽の報告をし、むしろ落人らに報いる活動をすることになる。そのうち、鶴富姫という美女と恋に落ち生涯をともにしようと決意し、姫のお腹には新たな生命が宿った。しかし、頼朝から帰還命令を受けた大八郎は、苦悩の末に椎葉を離れるという悲恋物語としての結末を迎える伝説である。
なぜ源平と二分して争わなければならないのか?逆心あるとすれば、一族根こそぎの殲滅をしなければならないのか?これも伝承であるが、頼朝というのは妙に慎重過ぎて、自らの権勢を脅かす存在を次から次へと抹殺していったという。その結果、源氏は三代で絶えてしまう結果となる。京都・鎌倉から遠く離れた九州の地の、更に山深い地にこそ、「桃源郷」のような「小国寡民」な共同体が創造できる。「農耕生活・自給自足」そんな生活観念こそが、「平和」の原点でもあるように思われる。このように考え、頼朝の命に背き虚偽の報告をした大八郎の心に思いを致すのである。
鎮魂とともに『平家物語』から学ぶことは多い
古典を読むとは、こういったことを今に引き寄せて創造的再構築するということ。
権勢争いとは?武力とは?知的に歴史を知る円熟した発想を持ちたい。
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