生誕105年「太宰治」を考える
2014-05-25
県立神奈川近代文学館「太宰治展」における
気になることば覚書から
「物語」に並行して「物語がどのように作られていくか」という舞台裏を
読者に解説して行く点に太宰の文学の大きな特色があり、・・・
原典をもとに、それをいかに作り替えていくかを並行して解き明かしていくかパロディの手法は、
ストーリーテラーとしての彼の資質にもっとも見合ったものであったわけである。(安藤宏)
「美談を書くのが小説家の使命なんだ」
小さな出来事を、作者の幻想により、嘘みたいなまことの話
ほんとうの事さえ
嘘みたいに語るようになってしまった。
けれども君を欺かない。
きょうもまた
嘘みたいな、まことの話を君に語ろう。
(「善蔵を思う」創作メモから)
こたつで「盃を含みながら全文、蚕が糸を吐くように」口述するのを、美知子が筆記した。
太宰の口述はよどみも言い直しもなく、美知子は筆記しながら「畏れを感じた」という。
(「駆け込み訴え」)
太宰が試みて来たのは客観的に「描くこと」よりも
常に具体的な聞き手を想定して「語ること」なのであった。
以上、特に大宰の「語ること」そのものに、
作品の深淵が潜んでいることを悟った。
そうして午後は研究学会のシンポジウムへ。
基調講演では、大宰の娘さんである
作家・太田治子氏のお話が聞けた。
1時間を遥かに超えるその口述は、
メモ書きに目を落とすこともなく、
常に個々の聴衆へ向けられており、
伝えようという意志が看守できた。
「自分は弱い」という通常の人々が言えないことを、
太宰は言っている。
「信じることに現実があって、
現実は決して人を信じさせることはできない。」
(『津軽』の一節から。「口述筆記」ゆえ正確ではない・中村注)
人ができないドラマチックな生き方
言行一致のひと
不良少年の魅力
あのように死んだことで大宰作品は今に生きている。
(以上、基調講演の覚書から)
太宰治
何とも奥深く魅力的な人間なんだ!
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