講演「日向神話を読みなおす」を聴いて
2014-02-23
居住地域に根付いた「文学」。あらためてその扉を開いてみたくなる。
講演「日向神話を読みなおす」を聴いて。
大学の創立記念事業により、『古事記』研究の第一人者・三浦佑之氏による上記の公演が開催された。上中古文学を専攻とする者として、大変興味深く拝聴した。大学学部時代に、『古事記』と『万葉集』(僕はこちらに所属)の研究会が合同で宴会などを開いていたせいもあって、その頃『古事記』に関して読む機会は結構あった。同時に、学部時代に講義を受けた『古事記』研究をする先生のキャラクターを慕っていたことも、古代文学への憧憬を深める理由でもあった。
昨年から「日向神話」に関する由緒ある土地を、機会あるごとに訪れた。だがなかなか『古事記』を読みなおす機会を得ないままだった。あらためて三浦氏の「記紀」への考え方や、「神話」の読み方を知り、その深淵に対する好奇心が起動した。「日向神話」の『古事記』の中での位置付けを起点とすることで、僕自身の中でもあらたな「読みなおし」ができるような気がして来た。そんな思いから、講演の帰途に三浦氏の御著書を購入した。
住んでいる地域の文学を知ることは面白い。それは、僕が幼少の頃からの大きな動機付けだ。芥川龍之介や萩原朔太郎が居住していた、所謂「文士村」と呼ばれる土地で僕は生まれ育った。それならば近代文学を専攻としてもよさそうなものだったが、結果的に中古文学を専攻としている。文学研究を和漢比較という方法で考究しているのと同時に、国語教育に関する論考も進めているのは、こうした背景があるからかもしれない。どこか欲張りに、教材論や授業方法論を考えることで、近代文学と関わりたいという欲望を満たしているのかもしれない。
要は、「文学」をどこまでも楽しめばいい、ということに帰結するのだろう。そんな意味でも「日向神話」への興味は、僕が考究する多様な研究分野の中に新たな灯火をつけたような気がしている。「記紀編纂1300年事業」を県で推進しているようだが、この地に住む子どもたちに「神話」への興味付けができているかと言えば、未だおぼつかない印象である。絵本やリライトされた物語なども活用して、生まれ育った土地に根付いている「文学」を子どもたちにも伝えていく方法を考えたい。それこそ僕が、この土地でできることなのだと思う次第である。
三浦氏の批評性に富んだ視野の広い「神話」の読み方。
あらためて「文学」としての『古事記』の面白さを知る。
「国定教科書と神話」という三浦氏の論考を、ここに覚書として記しておこうと思う。
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