「無心の境地」で跳ぶ・舞うに過熱
2010-02-27
26日(金)この日、日本では多くの場所で冬季五輪フィギュアスケート女子が話題を独占していた。毎回そうだが、五輪に対しての過熱度は世界標準で見ても高い国民ではないかと思う。しかも日本人選手が出場し上位の成績が有力な競技に限定して。五輪開催中に海外に滞在していた経験があるが、TV・新聞などのマスコミがここまで過熱した報道をするのは、やはり日本に特徴的なのではないかと思っていた。一昨日の小欄でも書いたように、この日の見所は韓国・キム・ヨナと日本・浅田真央の一騎打ち。昼過ぎは巷のあちこちで、また様々な職場で興味の目が注がれていたことだろう。小生は、自宅研修をいいことに、自宅の大画面を独占し、この対決を見ることができた。
順番からいくと、浅田の前にキム・ヨナの演技。観ているとその無心の世界に自然と引き込まれるよう。そして演技を終了した直後に、自らの完璧さに溢れ出る涙。もはや近寄りがたい崇高さを備えた19歳は、そのコメントの中で「結果は神様が決めるものだ」という趣旨のことを発言したという。それはまさに「無心の境地」を代弁したもの。あの集中度の高さの秘密は、こうした精神の根底に支えられていたのだと納得した。その結果の世界最高点到達。
その次の浅田の演技。果敢にトリプルアクセルを2回敢行し成功させたが、後半でスケートのエッジが氷に取られてジャンプが不十分な印象。全体としてまとめたといえるのだろうが、大逆転を果たしたという結果にはならなかった。しかし、後半の不運がなかったとしても、たぶんこの日のキム・ヨナには及ばなかったのではないかと思われる。しかし、夜のTV番組で報道されていたが、浅田は徹底した栄養管理と体重管理を施してきたという。その中で「(体重が)500g違うとトリプルアクセルの負担が違う」ということを発言していた。まさにミリ単位の勝負が行われていたのだと実感した。しかし、幼さの残る表情を、無理に怖いように仕立てて舞うのには、少々違和感があった気もする。安藤美姫のクレオパトラの方が、個性的にはまっているようにも感じられた。競技の基本的構成を浅田に適合したものにしていくのも、今後の課題ではないか。つまりコーチの問題だろう。
こうした大まかな論評は、既に世間に氾濫するほど出回っているだろう。この日の夕方から髪カットに床屋に出掛けたが、やはりこうした話題が独占。各座席に個々に備えられたTVモニターに流される番組も、改めて何度も2人の競演を映し出していた。そして殆どの客がスタッフと、スケートの話題。他の客の弁によると、昼時にTVを備えた喫茶店は、立ち見まで出ていたという。「なんならうちの床屋でも立ち見でいいのになあ」と友人である店長の弁。床屋でスポーツ中継の立ち見というのは、聞いたことがない。まあ小さな巷間においても、国民の多くがスケートに注目していたという縮図が覗えた。
しかし、もはやこうした採点競技は、点数や順位は度外視するべきではないかとも思う。個々がそのベストな妙技を個性的に魅せることが、こうした競技の焦点ではないか。そうした意味で、「無心の境地」であったキムが自然に結果的に女王の座に就いたのは、必然であるだろう。
五輪も終盤。こうした日本での過熱の背後では、カーリングの準決勝で針の穴を通すような神経戦が展開されていたり、エアリアルで4回転もの空中での妙技が大胆に行われていたりもするのだ。
報道の過熱ぶりに触れつつ、自らもその話題に飲み込まれた。19歳の氷上のライバル関係が、新たな日韓関係への橋渡しにでもなれば、尚更嬉しい過熱ぶりと言うことにもなるのだろう。
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