「伝統的言語文化」と「音読・朗読」
2013-12-13
理論のみならず実践で示したい。従前から持ち続けている信念の一つである。
大学で研究を推進しつつ、現場でどのように展開するか。
その両立は大きなテーマである。
勿論、自らの授業も、そして附属校ので行われる授業も。
附属中学校で公開研究会が開催された。国語科として研究主題を立て、公開授業を実施し研究協議に及んだ。指導助言者として最後の最後にコメントをしたが、4月以降取り組んで来た共同研究の成果を述べるという意味で感慨深かった。そしてこの理論と実践の交響を、これから活字化する作業が始まる。
中学校における「伝統的言語文化」の扱いをどうするか?この課題に対して具体的な提案をすることには、大きな意味がある。現行指導要領では、小学校から系統的に「伝統的言語文化」を扱うことになったからである。例えば、今回の公開授業の教材『竹取物語』などは、その冒頭文が小学校5年生の教科書にも採録されており、その時点で「音読・暗誦」を通した学習が行われる。内容や語句の意味などの詳細な読解には及ばないが、中学校に入学して来る多くの子どもたちが既に、『竹取物語』冒頭文を暗誦できるのである。そこで中学校1年生では、どのような学習が求められるのか、という点が今回の提案の主旨である。
この点を、僕自身の研究分野である「音読・朗読」と結合させて実践可能な展開を、附属中学校の先生方とともに考えて来た。「音読・朗読」という観点で述べると、中学校の3年間の学習において大きな進歩を求めていくべきであることが明確になった。小学校ではことばの響きに依存し、身体的に「声」に出して”楽しむ”活動となる。それが中学校になると、「音読」から「朗読」へ”昇華”させるべく学習活動を展開する必要があるということだ。
「音読」と一概にいっても多様な段階や目的がある。小学校で行われる殆ど意味を介在させない身体的な「音読」もある。(*「伝統的言語文化」=「古典」教材に対しての扱いに限定した場合)だが中学校になれば、「声」にする段階でその文章に対するイメージや語句の特徴などを考慮した「音読」が求められて来る。次第に内容解釈を反映させて他者に伝えるべく実施する「朗読」へと進歩して行くべきである。こうした移行期が中学校の古典学習の位置付けとして重要となる。これは現行指導要領の「伝統的言語文化」の扱いにも合致している。
こうした活動を通して、子どもたちが古典に親しむことを目指す。そこで大切なのは、学習者である子どもたちの「意欲」を喚起することではないだろうか。附属中学校で実施したアンケートに拠れば、古典学習の必要性を何かしら感じながら、自ら古典を読みたいと思う子どもたちは少ない、といった結果が出ている。同様に今月になって公表されたPISA学力調査の結果でも、「力」は回復してきているが、「意欲」(興味関心)は未だ低調であるという点が指摘されている。現にこれまでの中学校・高等学校を通した古典教育において、大量の「古典嫌い」の子どもたちを産み出して来てしまった大きな流れを、変革させるべき工夫や配慮が必要なのである。
本日は、この程度の記述に留めておく。
この内容は今後、共同研究における成果として論文化する予定である。
小中高を通した古典教育を、現場が積極的に連携し考えて行くべきときである。
そしてまた「伝統的言語文化」とは如何様なるものなのか?
その命題に答えるべく、指導者・学習者の中に新たな意味付けを創造していくべきであろう。
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