甲子園大会ー“Reset”の平常心
2013-08-20
再起動。(コンピュータ)接ぎ直す。(骨など)
つけ直す。(宝石など)
組み直す。(活字)
その時、平常心でいられるか否か?
上記のごとき辞書的な意味では、「平常心」云々という範疇ではないように思える。例えば、ゲーム感覚であれば”Reset”はいとも容易なことだ。だが”現実の再起動”ほど困難が伴うものはない。同じ結果になるかどうかの保証はまったくないからだ。むしろ1度目が好結果であれば、2度目に同等の結果を出す為に重圧が掛かる。こうした局面の耐性において、昨今は脆弱な面を露呈する人々も多い。
珍しくカーラジオで甲子園大会の中継を聞いていた。延岡学園対富山第一の準々決勝第4試合である。9回表富山第一の攻撃は、1死一・三塁の好機であったが、二塁併殺打で万事休すと思われた。しかしその直後、審判団が協議し「3塁側ブルペンからのボールがフィールド内に入り、左翼線審がタイムを掛けていた。」ということが確認され、あろうことか併殺は”幻”となってしまった。この”Reset”プレーによって、富山第一は好機を再起動し、延岡学園は最高の脱出劇を再演しなければならなくなった。筆者が「あろうことか」と記したのには二つの理由がある。
これに関しては、野球規則・甲子園大会個別ルール、また甲子園球場のグランドルールを確かめたわけではない無責任な発言であることをあらかじめお断りしておく。線審がタイムを掛けていたとしても、主審が試合を続行したならば「インプレイ」ではないかという疑問である。風に乗って何かがフィールド内に舞い込む、はてまた動物が乱入するなど、様々な障害物がインプレイ中に入る可能性は存分にある。その際に、「タイム」となるのは、塁審・線審(この試合は黄昏時になっていたので両翼に配置していた)のコールを主審が察知してコールした場合ではないのであろうか。(現にこの試合に限って線審が配置されていたが、4審で行われる通常の形態であれば、このタイムは掛かりようがないのであった。線審は本塁打・安打のフェア・ファアルを見極める責務において重要なのである。)このタイミングでフィールド内にボールが入ったとしてもプレーを流し、もし仮に、そのボールに打球が当たって不規則な変化をしても、それはフィールド内の「石ころ」扱いになるのではないか思われるのである。現に二塁ゴロ併殺打という”幻のインプレイ”では、何ら障害がなかったのである。(せいぜい左翼手の気が散漫になっていた程度であり、プレー上問題はない。)二つ目の理由は、筆者自身がやや延岡学園に贔屓をしているという事実である。(それでも富山第一出身で、この2月に知り合った野球関係者の顔を、脳裏に浮かべながらであるが。)
ラジオを聞いていた僕が懸念したのは、「最高の脱出劇」を再演できるかどうかということである。これ以上ない結果を1度出したにもかかわらず、それが反故になった際の重圧。通常であれば、不安が先走り必要以上に力み、平常心でのプレーができなくなるのではないかという想像が僕の脳裏を駆け巡った。延岡学園の監督は、伝令選手を2度も主審の元に送り、再演が妥当かどうかの「確認」を行った。だが、すぐに延岡学園の選手は守備位置に戻った。圧巻なのはこの後である。延岡学園の投手は2者連続三振という、より劇的な”再演”でこの窮地を脱出したのだ。ラジオ中継の向こう側を想像するならば、むしろ富山第一の打者の方が力んでしまった感があった。
ものの見事な “Reset”の平常心!
何とも野球から学ぶものは多い。
切り替えの早さ。
窮地に追い込まれた条件を恨まない潔さ。
(本日に至ってもこだわって記している僕よりはるかに潔い。)
日本の高校球児の耐性も捨てたもんじゃない。
くよくよしてるよりも、次のことに全力を!
やはり野球には哲学が読めるのである。
最後にやはり、好試合を展開した両チームに拍手を送りたい。
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