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恩師とゼミ生と

2013-08-12
恩師はいつも柔和であった。
ゼミ生はいつも活発に議論した。
恩師は鋼のような芯の強さをもっていた。
ゼミ生は忌憚なき意見を笑顔で交わしていた。
恩師が与えてくれた希有な体験が僕の礎になった。

毎年恒例となっている恩師の墓参。鬼籍に入られた年には闘病のために、恩師に卒論指導を仰いでいた学部4年生を、代講として僕が指導する縁をもらった。爾来、天に召された恩師を慕いながら、このゼミ生とは親しい関係が継続している。ゆえに毎夏、ゼミ生とともに恩師を偲ぶ。重ねること6年目の夏。

古典をどう読むか。基礎基本である注釈をどれだけ活用しつつ、自己の読みを築くか。古典教育は適切に為されているか。そして筋を通すとは何か。古典研究に国語教育、そして人生の歩み方まで恩師から学んだことは計り知れない。現職教員であった僕を大学院に温かく迎えてくれて、そして後期課程から博論まで導いてくれた。

ゼミ生からも多くを学んだ。彼らの古典への情熱は、指導する側の僕を絶え間なく刺激した。授業枠を遥かに超えた『源氏物語』に対する白熱した議論。各自が心から面白いと感じて古典を読むという姿勢が、どれほど大切かを、身を以て思い知った。図らずも6年後の現在、多くのメンバーが芯の通った人生を着実に歩んでいるのは偶然ではない。

いま改めて、恩師が遺してくれたものを反芻しながら、過去と現在と未来を語り合う。大学時代に植えた苗がすくすくと育つ姿を見るようである。恩師が結んでくれたゼミ生との何にも代え難い関係。そして恩師の奥様宅を訪問して、自分たちの中に根付いているものを改めて見出す。壁に掛けられた恩師の遺影が微笑んで見守ってくれている。

人生に巣立つゼミという場。
鍛えられ自己の夢を叶える足場を固める。
恩師の指導にあらためて感謝するとともに、
今後は僕がそのような場を創成していかねばなるまい。
文学があり教育がある。
僕自身の現在の使命を、再び恩師とゼミ生が語り掛けてくれた1日であった。
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