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『杜子春』は難しい

2013-05-26
今年度第2回目の集中講義「授業に活かす朗読講座」
今回は、「近現代小説の朗読を考える」というテーマ。
題材は芥川龍之介『杜子春』である。

教材としては中学生、または小学生でも読めそうな話である。だが、いざ朗読素材として読もうとすると、何とも難解な小説である。漢語の使用、独特な語り手・文体、描写密度の振幅等々、考えれば考えるほど難しさに気づく小説である。

朗読への作業を開始する前に、教育現場で小説をどのように扱うかという国語教育における現状認識。「言語活動」を通して「学習者主体」な小説授業を創るにはどのようなことを考えておいたら良いかを提示した。「受信⇨熟考⇨発信」という過程を通じて学習者が自ら考え、自分なりの感想を持ち、発表する授業を求めたい。

こうした「言語活動」を主軸にした授業においては、「音読・朗読」が大変有効である。「音読」で内容理解を促進し、他者とのよみの方の違いを交流し、そして「朗読」表現する為に各自の思案を擦り合わせて行く。この過程で、学習者の中で次第に深く小説が腑に落ちてくるわけだ。

この日の授業では、こうした過程を大学生が体験した。より小説に対して深い分析力がある為に、「熟考」の過程が奥深い。同時に表現するために「アクセント」や「読み方」の検討も疎かにしない。その結果、授業前と後では『杜子春』に対する教材観が変化したと実感する学生が多かった。

5人平均6班の学生たちが「一」から「六」までを読み継いだ。個々の班の個性が存分に発揮されながらも、一つの物語を構成できた。多様な考えを伝え合い、そして調整して一つの朗読表現にすることで、その場にしか存在しない『杜子春』が現出した。

学生の中から5名が『杜子春』を7月の公開発表会で扱うことを希望した。
さらに練り上げた朗読作品が期待できる。
集中講義としての今年の講座。
毎回が期待と喜びに満ちている。
意欲ある学生たちとの出逢いに感謝である。
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