田村耕太郎氏著『世界のエリートはなぜ歩きながら本を読むのか?』
2013-04-22
この4年ほど、というのは小欄を書き綴り始めてからというもの。研究・教育実践・批評等を自分なりに文章化し模索して来た。
そのカテゴリの中でも「トレーニング・健康」は、
「教育」の「56」に続き、「47」と2番目に更新数が多い。
これは日常生活において至って自然な流れで、フィットネストレーニングが、
脳の活性化にも効用があることを、どこかで念頭に置いていたのであろう。
そのような意識を具体的に肯定してくれたのが標記の一書である。
同書では、氏の様々な留学経験から、主に「ハーバードビジネススクール(HBS)」に在籍するようなエリートたちが、まさに「文武両道」であり、日常からトーレーニングに励み脳を活性化させ、研究・実践の活動に奔走している姿を紹介している。更に第2章では、その「運動」「食事」「座禅」といった脳活性化の要点を、具体的な方法として提案している。第3章では、日本の偏向した体育会系事情を鑑みて、世界では「文武両道」が正道であることを具体例とともに説いている。
全体を通して強く共感したのは、こうした世界的エリートたちは「時間がない」ことを理由にしないということだ。朝型の生活を旨として、効率的に筋力を鍛えることで研究やビジネス上の体力も獲得しているという。社交は概ね朝食か昼食に限定し、夜にアルコールを伴い無益に長く時間を浪費することがない。書名の由来として、多くのエリートたちはランニングマシンをしながら書物を読む姿が象徴的であるというわけである。
僕自身も以前より、欧米の政治家・研究者・医師・弁護士などが、学生時代等を通じてスポーツでも一定の業績を残していることには関心があった。プロゴルファーであるが医師である(僕の記憶の中にあるギル・モーガン)とか、プロ野球選手であるが博士号を取得しているとか(田村氏の著書で、赤ヘル旋風時代の広島カープの助っ人・ホプキンスを紹介)いう例も珍しくはないということである。それは既に欧米人が高校時代から身に付けた姿勢であり、「文武両道」でなければ「運動」もやらせてもらえないという環境が存在するのだという。日本の場合は、まだまだ「運動」でさえ実績を上げれば、他のことは全て免除されるが如き誤謬が蔓延している。それはプロスポーツ界や高校スポーツ界をみればすぐにわかることだ。
「運動が脳機能に与える影響」について研究している筑波大学・征矢英昭先生に対して、田村氏が行ったインタビュー記事も興味深い。征矢先生は、特に「脳の機能によい影響を与える、運動強度や運動量がある」という仮説をもとに研究を進めているという。特に「筋トレなど高強度の運動が脳に効くということにつながる可能性がある。」といった大変興味深い談話が載せられている。
田村氏は、動物としての「ヒト」の特長に随所で言及し、その優位性と脳発達との関係を述べている。100mなら動物に劣るが、「42.195Kmを走らせたら生物界ナンバーワンだという。」といった記述である。人類発達史に敷衍して「ヒト」の機能を語りたくなるのもわからいではないが、ややこの点は慎重に考えたいという感想をここに添えておきたい。
全体として、ベジアリアンの勧めや高齢化社会での生き方など、今後の日本社会を見据えたライフスタイルの提案という「コンディショニング術」が記されている。雑誌『ターザン』の連載記事を纏めた一書。僕自身も、小学校時代から「文武両道」を信条としていたので、十分に納得できる内容であった。
そしてまた運動をすることは勿論、
格好よく服を着る、そして異性にモテる、
ことに通じる言及も避けていないあたりが嬉しい。
本書を読んで早速、日曜日の早朝から約5Kmのウォーキングを自らに課した。
今後も自らの「生き方」として、トレーニングを充実させる意志を新たにした。
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