音声と文字を結びつける頃
2013-04-16
中高一貫校の国語教員として勤務していた頃。「中学校」と「高等学校」の授業での大きな違いは何であったか?
最も顕著であったのは、漢字の「書き順」と「とめはねはらいおれまがり」である。
板書する際に学習者の視線が教員の書き順に集中する。
「高等学校」になると学習者の意識も希薄になるが、
「中学校」では、学年が下であるほどこの意識が高いものである。
新しい職場で、先輩となる先生の「初等国語教育研究」という講義を参観した。3年生で履修すべき学生を二分割して、僕が並行して担当する科目である。特に第1時間目で「授業ガイダンス」の要素が強かったので大変参考になった。なかでも、次の要素を大切にせよと学生に喚起を促す点は重要であると思われた。
1、音声と表記が一致しない場合の指導(例:せんせい・とおり・おうさま)
2、漢字の書き順(例:飛・波・長)
3、とめはねはらいおれまがり(例:「木」の縦棒の下の部分・「い」の書き方)
4、促音・拗音のローマ字表記(例:マッチ・チョーク)
(特に4点目の場合、小学校3年生で「ローマ字」を習得し、高学年の英語活動で「アルファベット」を習得する。この英語活動との相互関係に指導上の配慮が必須となる。)
勤務校の大学3年生は、9月に附属校での実習を控えている。そうした意味では、あと半年でこのような文字の基礎的な素養も身に付けていかなければならない。もはやこれは学生個々の意識に委ねるしかないのであるが、それだけに年度初めにあたり注意を喚起しておく必要性があるだろう。
前述した項目の1点目「音声と表記が一致しない場合の指導」にも個人的に興味が惹かれた。特に小学校1年生段階では、重要な指導事項になる。発達段階を通じて、「ことば」が「音声」で入っているものを、「文字」へと置き換えていく教育が現場では必須であるということ。僕自身はこれまでに小学校高学年以上を対象として考え、「音声」から「(内容)理解」を重視した「音読」という学習活動について様々な視点から考察を加えてきた。だが改めて「音声(表現)」と「表記」の微妙な差異についても考えてみるべきであることを発見した。こうした基礎的要素を意識することによって、言語文化として更なる深淵を現場に提供できる契機になると考えられる。
一人の人間のなかに言語文化の発達段階が潜んでいる。
それを意識的に見せていくのも国語教育の責務であろう。
「音声」と「文字」との同工異曲にこだわりたい。
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