ライブ『カナリヤと、すてきななかまたちと、ちいさな木』
2013-02-23
「あなたはあなたになるために生まれてきたのよ。この世界には、意味のないことはひとつもないの。
すべてのことには意味と目的があり、
それを知るには、気づくこと、学ぶことが必要なのよ。」
(葉祥明著『The Great Story of Little Tree』晶文社刊より)
グレートマザーツリーが、代々、森のリトルツリーに語り伝えることば。
小さなこの絵本に込められた人生の寓話。
素朴なことばから生きることの深淵が見えて来る。
これまでにも何度か、春口あいさんが語るこの作品に触れて来たが、この度はまた格別なライブであった。フルートのすずきかすみさん・アコーディオンのうめのえりさん2人のユニット「カナリヤ」とともに、コントラバスの内山和重さん、パーカッションのくどうげんたさんが加わり、原作絵本の世界観を、声と音とでライブ空間に立ち上げた。原作に様々な音を受け容れ許容する“余白”が見え隠れするからこそ、声と各楽器の響きが融合し、「ちいさな木が豊かに成長する物語」を表現した。
作曲担当である「カナリヤ」のうめのえりさんに、ライブ後に話を伺ったが、この絵本を読みながらピアノに向かい、いくつもの旋律が現れて来たのだという。いわば絵本が持つ“呼吸・音律”を感じ取る音楽家の感性ともいえようか。そして演奏自体が、決して春口さんの語りを超えることなく、心地よい融和の中で進行したことも特筆しておこう。特にパーカッションは、こうしたライブではどうしても“響く”存在になるのだが、ある時には熱がこもり、ある時には静寂を破らない微妙な入り方であったことが、僕としては大変印象深かった。
またこの絵本語りの前には、「カナリヤ」演奏している間に、絵本作家のはまのゆかさんが、キャンバスに即興で絵を描き上げるというパフォーマンスも実演された。村上龍氏『13歳のハローワーク』(幻冬社刊)のイラストも担当したはまのさん、その心の琴線をくすぐるかの如く人々に安心感を与える絵が、見事に描き上げられた。
声と音と絵と。
様々な要素が融合し豊かな世界観が立ち現れて来る。
表現者はカテゴリーにこだわることなく、
様々な分野の人々が手を取り合って融合して行くことで、
更なる豊かな世界観になることが思い知れた。
朗読・旋律・輪郭。
目に見えない豊かさを現実に見せるもの。
「木の成長物語」を「主人公はあなた」と実感させるもの。
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