二軍にこそ誇りあり
2013-02-22
宮崎では、WBC日本代表がキャンプを行っているサンマリンスタジアムの華々しさの裏側で、同じ運動公園内のひむかスタジアムを中心に、プロ野球巨人の二軍も汗と泥にまみれた練習を行っている。4年前に訪れた時も、1日だけこの二軍練習を参観に行った。ちょうどその時は、僕が高校時代に担任をしていた選手が二軍に在籍しており、海岸線をランニングし防風林の合間から帰って来た際に、偶然会うことができた。彼は声を掛けた瞬間、誰が来たのかと不思議そうな表情を見せたが、
その後、やや残念そうに次のように言った。
「WBCを観に来たんですか?」
確か僕自身も彼に対して、「WBCをやっているので宮崎に来た。」といった趣旨のことを口走っていた。事実この時、WBC日本代表キャンプがなければ、宮崎を訪れてはいなかった。彼の表情には、「WBCが来ていなくとも、二軍を(目的に)観に来て欲しい。」といった気持ちが存分に溢れているように読めた。この時、プロ野球を表面だけ観ていただけでは何もわからないと実感した。
そのような意味で、今回の宮崎訪問でも巨人の二軍練習を観に行った。特に「育成選手」と思われる、背番号3桁台の選手が基本練習をしているのに興味が持てた。打撃の基礎となるトスバッティングを丹念に繰り返している姿が印象的であった。またキャッチボールから遠投に伸ばし、中堅の位置で打球を処理して本塁に返球する練習を繰り返した後、マウンドから投球をするというハードな練習をしていた投手の姿が目に焼き付いた。
今回は併せて、赤坂英一氏著『プロ野球二軍監督—男たちの誇り』を読んだ。選手同様、二軍監督という役目は大変厳しい。育成した選手が一軍に上がれば、自分の元を去り、一軍(球団方針)の要求通りの選手を適宜供給しなければならない。たとえその手腕が優れていても球団方針と合致した指導でない場合などは、何の前触れもなく突然の解雇も稀ではないという。しかし、プロ選手として、社会人としての日常的な生活から、ファンサービスをする態度、思い上がった傲慢さの矯正に至るまで、指導すべきことは山積している重労働だ。華々しさに満ちた仕事ではないが、このポジションをこなせる人こそ、“プロ”とは何かを知っているのではないかという感慨を抱くことのできる好著である。
プロの指導者として、実は二軍監督こそ教育者であり育成者であるのだ。
そんな思いを抱きながら、しばし二軍練習から学べるものを探した。
華々しい舞台の裏側に、こうした教育があることを観る者として忘れてはならない。
人生にも様々な一軍・二軍があるだろう。
挫けずに二軍を指導できるような忍耐強い教育者でありたいと心に誓った。
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