続・センター試験と日本の教育
2010-01-19
18日(月)土曜日・日曜日で行われたセンター試験の結果を自己採点し、大手予備校などにデータを提出する。予備校も我先にと問題やデータを分析し、講評を付けたり予想平均点などを出す。そして、この日のうちに集まったデータを詳細に分析して木曜日ぐらいには、受験生のもとに合格の目安などが届く。センター試験後、毎年恒例の一連の動きである。
この後、国公立大学の場合はたいてい2次試験があり、多くの大学ではセンター試験では問えなかった、論述力や記述式解答により最終的に合格者を決める。しかし、国公立の一部もそうだが、私立大学の大半が、このセンター試験の結果のみで合格者を判定する。いわば、自分の言葉で書くという「論述」なしに大学に合格できるのである。次第にこれを利用する私立大学は増加してきた経緯がある。
マークシートにより、正確かつ迅速に解答が採点されるのは、多くの受験生を公平な土壌で判定している。受験生は、大概5つから6つという選択肢の中から、「説明として最も適切なもの」を選び取る。一定レベルの基礎知識を問うということならば、大変効率的であり、まさに客観的な手段に見える。しかし、国公立のように2次試験に論述・記述があるならまだしも、この「選択肢式」のみで大学に入学できるというのは、どこかで日本の教育のあり方を拘束し、頽廃させているのではないかと思えることも多い。
「選択肢を選ぶ」ということは、換言すれば「間違いを探す」ということでもある。問題作成側の立場になれば、いかに簡単には見抜けない選択肢を作るかに腐心するのだ。他に設定しようのない知識ならば、「答えは一つ」であるだろうが、「国語」の読解・鑑賞を問うような場合は、「最も適切なもの」とならざるを得ない。されど、「一つの答え」を見抜き、他の間違いと区別しなければならない。必然的に間違いを探し「唯一無二の答え」を求める思考になる。
「国語」の読解・鑑賞という領域は、本来、各個人の多様性が認められるはずで、「自己の個性的な意見を思考し表現する」ことで、初めて成立するもの。決して「答えは一つ」であるはずはない。しかし、「自己の個性的な意見を思考する」よりも、与えられた選択肢から「間違い探し」をするという思考が、短絡的に即座に「唯一の答え」を求めようとする、日本における若者の思考に大きな影響を与えているのではないかと危惧するのだ。
現にTV番組のバラエティーなどにおいても、選択式思考ばかりが目立ち、正しいか間違いか、YesかNoかという選択を迫る。それが様々な面で国民世論にも反映され、「賛成か反対か」という選択のみを迫る政治姿勢などに、国民が誘導されていく結果となり、二極化の格差社会を生み出す。「勝ち組」と「負け組」という思考こそ、まさにその典型的な表象であったはずだ。
価値観の多様性が消去された社会は、生活する国民を「人間らしい生活」から遠ざける。そして「間違い探し」の思考は、「犯人捜し」に繋がり、一定の小さな価値観の中からはみ出した人物を「KY」と呼称し排斥してきた。ある一定の考え方が「常識」だとか「当然」だという発言は、価値観の多様性を奪い、他人を痛めつけ排除する発想に連なるのだ。
選択式問題の利点がないわけではない。しかし、日本の教育が世界水準に比して下落を続けている現状が報告されるたびに、「指導要領」の改訂や教育改革が叫ばれてはいるが、同時に「大学入試改革」を断行しない限り、高校の教育内容は変化しないのではないかとも思う。世界的に「意見が言えない日本人」と言われて久しいが、そこに「個性」より「正解に靡く」という集団としての性質が、大きく関係していると考えられないだろうか。
2010年代初のセンター試験を終えて、こうした「憂い」を新たにした1日であった。
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