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イチローの「流儀」に学ぶ

2013-01-03
人としてどんな生き方をしているか。
瞬間的に結果を出す為に生き方を変えてはそこにいる意味がない。
苦しいときこそその姿勢(生き方)が問われる。

年末29日に録画しておいた「プロフェッショナル仕事の流儀 特別編 イチロースペシャル2012」(NHK)をじっくり観た。そのまさに「生き方」を刻み込んだ密着取材で得られたことばが、随所に重く響いた。映像を見終えてすぐに寝たので、「一富士二鷹三茄子」ならぬ「イチロー」と会話する初夢を見るという幸運にも巡り逢えた。

決して順風満帆なシーズンではなかった。2011シーズンから彼らしくない打撃が目立ち始め、極度な不振に陥り年間200安打はもとより、オールスター出場やゴールデングラブ賞も逃した。日米のメディアは、年齢による衰えをその原因と報じた。イチロー本人にすると、その状況でこそ「生き方」が問われるのだという。「人としての成熟期はまだ先であって、その時にも選手でありたい」という目標がある。「野球選手としての“死”を笑って迎えたい」というのだ。今はまだ「笑えない」という。

2012シーズン開幕当初は好調だった。ダルビッシュ初登板の際に徹底的に打ち込んだのは記憶に鮮明だ。しかし、「相手が手探りの中での好調さは参考にならない」と本人は慎重だった。そのことば通りに5月には打率271、6月には256まで下降。それを番組中のイチローのことばで置き換えると「感触と結果が比例しない」のだという。同時に所属するシアトル・マリナーズのチーム状態も彼自身に影響した。チームの守備における集中力を欠く凡プレーによる敗退を機に、イチロー自身の精神状態とチームの選手の乖離が甚だしくなっていった。
「チーム内で価値観が共有できない」

そんな中で、イチローは妻・弓子さんの生き方も語った。どんな苦境のときもイチローを陰で支えて来た。彼女は「人を支える生き方」を選択している。それなら「僕は誰かを支えているのだろうか?」という自問自答をするほど、弓子さんの生き方が心に響いて来たという。「生き方」を問うということは、人を尊重することでもある。

周知のように、2012年7月23日の電撃的なヤンキースへの移籍。「(シアトルを離れるのは)寂しいが前へ進むための区切り」だと語り、本拠地セーフコ・フィールドを何度も運転しながら振り返るイチローの視線が印象的だった。移籍後も、決して打撃が即座に好調になったわけではない。自分が納得する(バットの)辺りにボールが当たっているが、結果が伴わない状態は続いた。その微妙なものこそが打撃の極意であるということだろう。その打撃に対する“哲学”ともいえるこだわりが、イチローの「生き方」なのである。結果を出す為に、姿勢を変えてしまう安易な方法をイチローは選択しない。

その延長上に、9月月間打率385がある。僕自身も9月に渡米しボストンでイチローの打撃を眼の前で見たが、やはりそれまでとは違うものが感じられた。スター選手が居並ぶヤンキースという集団への適応とともに、自身で納得する哲学を貫いた打撃が戻っていた。その状態はポストシーズン(10月)でも継続し、むしろ常勝チームらしからぬ敗退をしたヤンキースにあって、マリナーズ時代の盟友・イバネスと2人で気を吐いたような打撃であった。チームが無得点で迎えた9回に2点本塁打を放ったことが、彼の今季の「生き方」を象徴しているようにも思えた。(本節は、番組で伝えなかった僕自身の見解による記述である。)

ありったけの自分を捧げて「生き方」を探し続ける。
日常生活の中での筋トレ・ランニング・素振りを欠かさない。
試合開始5時間前には球場入りする。
その努力を自身の哲学の為に励行する。
その苦しさを吐露することばも聞かれた。
「好きなことを仕事にしているのだが、決して楽とはいえない。(野球をやっている)子供達に対して、そう簡単に野球選手になれとはいえない。」
イチローの本音だろう。

シーズン後、ニューヨークから車で半日ほど走った野球殿堂のある田舎町・クーパーズタウンを訪れるイチローの姿をカメラが捉えた。その展示を見る彼は「少年のように真っ直ぐな眼」をしていた。僕自身もこのクーパーズタウンには2度ほど訪れたことがあるが、やはり野球を愛好する人間にとっての原点がそこにある。殿堂から少し離れ通りから入り組んだ場所にあるフィールドは、野球発祥の地といわれているところ。そのフィールドに立つイチローは、また新たな決意を胸に抱いているように見えた。殿堂見学後に、このフィールドを必ず訪れるのは、僕自身も励行していたことなので、妙に親近感が持てる番組のエンディングであった。

「どうやってこの人が生きているのだろうか」
それを魅せるのが大事。
目先の悦楽や安定よりも自己の“哲学”を貫く。
イチローの「生き方」から学ぶものは計り知れない。
それこそ「プロフェッショナル」ということであろう。

自らの「生き方」に徹する1年にしたい。
そんな年頭の決意を触発させるに余りある番組であった。
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