胃袋は闘っていた
2012-12-12
1年1度の人間ドッグ受診、既に7年間ぐらいは継続している。その1年間で身体に変調が来してないか。実に科学的に客観的に見つめ直す1日となる。この7年間のデータ変化を見ても、脂質・肝機能・血圧・尿に関連した数値は、むしろ改善され、殆ど申し分ないという医師の診断を受けた。身長に対する体重比の目安となるBMIは、20.9と理想的な位置を指している。これも日常のフィットネストレーニングが功を奏した結果であろう。今回は、あのバリウム排出の憂いと医療被曝の大きさを避ける意図もあって、胃の検査は内視鏡を選択した。いわゆる“胃カメラ”である。5年ほど前に1度行ったことがあるので、比較的その経験からすんなり受診できた。ただしその方法は必ず「経鼻」限定を申し出た。昨今の内視鏡は大変細く小型化されている。ゆえに鼻の穴から挿入し受診することができる。僕にとって喉に異物が通過するのは、例えば耳鼻咽喉科における開口しての喉検査でも、嘔吐する感覚に襲われるので、どうしても避けたいところである。ゆえにこの「経鼻」という方式は、何ともありがたい胃カメラの通り道である。
通りやすい方と自覚する鼻の穴に麻酔薬を投入される。暫くして鼻から喉に至るあたりが麻痺して来る。そして検査台へ向かう。横向きに寝て自らモニターを見つめる。先端が光り輝く内視鏡が鼻の穴を大きく映し出す。そして身体の宇宙旅行へ。昔、「ミクロの決死圏」というSF映画があったが、確か鼻の穴から宇宙船らしき乗物で医療チームが患者の体内に侵入し、そこに存在する病原菌と闘うというストーリーであったと記憶する。さながらそんな感覚が現実のものとなっている。
ということなどを考えられるように、「“経鼻”胃カメラ」は、だいぶ受診する側にも余裕がある。力を抜き呼吸を止めないことと、唾液を呑もうとしないこと(開放的に自然に吐き出せばよい=涎を垂らせばよい)さえ励行すれば、実に楽に胃の内視鏡検査が受診できる。受診しつつ見られる映像は、次第に食道から胃袋の内部に潜入したことを知らせる。同時にカメラを操作する医師が、その箇所がどこであるかを解説してくれる。最深部である十二指腸の先端部分まで行くと、カメラは折り返しとなった。
特に大きな問題となる病巣などは発見されなかった。ただ、胃の底にあたる部分に荒れが診られるという。いわゆる「胃炎」の状態を“目視”することができた。その時感じたのは、「胃袋も闘っている」ということだ。日常的には見ることができない、自己の内蔵の内側。その胃袋は、自分自身のストレス等を受け止めて、その内壁を微妙に変化させていた。同時に、自分自身が暴飲暴食をしたとすれば、それを尽くこの胃袋は受け止めてくれている。口元で熱いと感じたものを呑み込んでしまう行為などは、胃袋への“虐待”ではないかと反省する感情が湧き起こった。自分自身の身体の一部でありながら、その奮闘ぶりに感謝感激してしまうような感慨に見舞われた。
「胃袋よ!ありがとう!」
君の日常的な奮闘に対して、持ち主として最大限の敬意を表したい。
こんな気持ちから、
受診後の昼食では、普段より入念に咀嚼を繰り返した。
熱いものは冷ましてから呑み込んだ。
午後には即日で医師から総合的な結果が通知された。
胃袋と食生活やストレスとの関係について十分に質問を繰り返した。
例えば「強いお酒をストレートで呑む行為は、胃壁にダメージを与えますよ」と優しげな男性医師が笑顔で告げてくれた。
「そうですか」
自らの胃袋に優しくありたい。
そんな気持ちが充満し、診察室をあとにした。
胃袋も闘っていた。
それが自らの一部であるという不思議な感覚。
人間の心というのは、何と身勝手なのだろうか。
配慮を持たなければ、どれほど胃袋を酷使してしまうか。
最新医療の恩恵により
人間とは何かという深い哲学の杜に踏み込むような経験であった。
もう一度いう、
胃袋よ!ありがとう!
これからもともに歩もうぜ!
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