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『声に出して歌いたい日本文学』で学んでみたくなる

2012-12-05
珍しくカラオケに行く機会に恵まれた。年末特有の恒例行事といってもよい。行くと僕は殆どが桑田佳祐の曲を選択することになる。今年は7月に新曲を含めたシングルベスト盤「I Love You Now & Forever」が発売されたので、自ずと“サザン”ではなく“桑田”のソロシングル曲が僕の中ではブームである。中でも18分39秒に及ぶ、「声に出して歌いたい日本文学」は、国語教育に携わる人間として大変興味深い楽曲であるということができよう。

タイトルの通り、近現代文学の代表的な作品を歌詞として桑田が曲を付けたものである。そこに引用された作品は以下の通りである。

『汚れつちまつた悲しみに・・・』(中原中也)
『智恵子抄』(高村光太郎)
『人間失格』(太宰治)
『みだれ髪』(与謝野晶子)
『蜘蛛の糸』(芥川龍之介)
『蟹工船』(小林多喜二)
『たけくらべ』(樋口一葉)
『一握の砂』(石川啄木)
『吾輩は猫である』(夏目漱石)
『銀河鉄道の夜』(宮沢賢治)

以上である。
漱石があり鴎外がないのはやや物足りないが、これほどの作品群を一曲の中にメドレー調に纏め上げた桑田の曲作りの力量は、天才としかいいようがない。〈教室〉で教科書の中で同じ作品を読んだ時には感じられない、深い味わいが作品に付加されている。〈教室〉では「国語」が嫌いだった学習者も、この桑田の曲を聞けば、きっと日本語・日本文学の美しさに魅了されるに違いない。

例えば、『みだれ髪』などは、与謝野晶子の特性を十分に発揮した短歌が並ぶが、〈教室〉でその深淵に踏み込むには、かなりの勇気が必要となる。それを桑田がその楽曲作りの特長として持つ、実にエロティックな面を全開に表出する魔力に落とし込まれると、晶子の短歌が深く心に染み込んで来るような感情を覚える。むしろエロティックの表現を心得ているからこそ、品性のある曲を『みだれ髪』に付与することができる点が、桑田の天才たる所以のように思われる。その魅力はもはや曲を聴いてもらうしかないが、僕自身この曲を聴いて何度となく自然と涙が出て来てしまうほど、日本語・日本文学とは美しいと改めて実感してしまうのだ。その桑田が曲付をした晶子の短歌をここに引用しておこう。

 「やは肌のあつき血潮にふれも見でさびしからずや道を説く君
  乳ぶさおさへ神秘のとばりそとけりぬここなる花の紅ぞ濃き
  いとせめてもゆるがままにもえしめよ斯くぞ覚ゆる暮れて行く春
  春みじかし何に不滅の命ぞとちからある乳を手にさぐらせぬ
  人の子の恋をもとむる唇に毒ある蜜をわれぬらむ願い」

あらためてこの晶子と佳祐のコラボは、何とも言えない魅力に溢れている。
やや真面目にこの曲をヒントにすると、こうした日本文学の名作に曲を付けて歌唱するといった「総合学習」の可能性などを考えてしまう。音楽と国語を統合した表現学習は、小中高校生にとって単に文字として名作に埃が被った状態で学ぶよりも、遥かに深く心に残るはずである。

18分39秒は、カラオケの1曲としては破格に長い。
ゆえに個人的な機会でしか歌うこともできそうにない。
しかし、これを桑田の感覚でシャドーイングすると
改めてその素晴らしさが腑に落ちる。
『声に出して歌いたい日本文学〈Medley〉』
僕の絶讃!お薦めである。
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