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貴社・貴学・阪神さん

2012-12-04
プロ野球の新入団選手発表会見が、盛んに行われる時季である。希望に満ち溢れプロでの活躍を期待された、社会人・大学・高校の優秀な野球選手たちが、己の抱負を語る。ニュースで阪神タイガースの入団会見を見ていると、ある選手が堂々と語っていた。すると、そのことばのなかに自らが入団する球団名を「阪神さん」と“さん付け”で呼んでいた。例によってTV画面下には、その談話内容の字幕が出ているが、そこには「さん」が省かれていた。TV局はどんな判断意識で、「さん」を省いたのであろうか。

野球界というのは、実績の如何を問わず年功序列で「さん付け」が原則である。日本シリーズ等のTV解説に他球団(そこまで進出できなかった)選手が出演することがあるが、試合に年上の選手が出るとやはり「さん付け」を励行している。幼少の頃の僕は、実力でしか野球の試合が見えなかったので、実力が勝る選手が年上という理由で、実力が劣る選手を「さん付け」にしていることが不思議に思えたこともあった。次第に自分が野球チームに参加すると、その意味が痛いほどわかった。

中高教員をしていた頃、職員室の電話でよく教材出版社と交渉している者がいた。彼の発言の中には「貴社」という語彙が連発される。「貴社の教材」「貴社のテキスト」「貴社の方針」等々、どうも端から聞いていて違和感を拭い去れなかった。本人は敬意を添える為に使用しているつもりのその語彙が、敬意が備わっているように聞こえないという矛盾。たぶん使用すること自体に問題はないのだが、あまりにも多用されると敬意とは程遠く、揶揄するかのように聞こえて来る。あくまで出版社側の反応や発言は聞こえないという、僕の独断であるのだが。

受験で面接がある場合に使用する語彙も大学なら「貴学」、小中高であれば「貴校」。そんな原則を面接の心得として生徒に指導する。もちろん推薦書等の出願書類にも「貴学」「貴校」と表記する。話し言葉と書き言葉でも違いは鮮明であるが、面接で「貴学」「貴校」を多用するのは、どうも“平常”な感覚ではなく、「造られた態度」のように感じられる。往々にして、受験面接のあり方も「型通り」であり、その“答え”の内容からして没個性になっている現状が窺える。面接は「技術」ではなく、その“人と為り”が表れることこそが大切なのではないだろうか。敬語使用として決して間違いではないが、その使用頻度によっては、“偽装”のような臭いがしてしまう。

高校野球界で育って来た選手にとって「さん付け」の意識は甚だ強い。高校時代の指導者も、「監督さん」と呼ぶ場合が多い。まさか「監督様」とか「監督殿」と呼ぶ訳にもいかないので、「さん」が妥当なのだろうが、この敬語であるかなきかの境界にある「さん付け」によって、微妙な上下関係における均衡を保っているようである。冒頭に書いた阪神タイガース入団会見において、自分が入団するチームを、「阪神さん」と呼んだ選手は、ある意味で野球界の常識を遵守したことになろうか。それが高校生らしい愛くるしさでもありながら、一方では堂々と「阪神タイガース」と呼ぶことの方が、好感が持てるという印象を僕は持った。もしかすると、関西の方ならば「阪神さん」というのは、より穏当な呼び方なのかもしれない。

幼稚園・保育園などでは「花組さん」「月組さん」、
それが中高生になって「A組さん」とか「学級委員さん」などというと、
やや幼い印象になってしまう。
要は敬語の語彙も、あくまで文脈が重要だということだ。

今日から「議員さん(候補)」たちが日本中を駆け回る。
「師走」ならぬ「議員さん(候補)」の奔走が始まる。
しかし、「議員さん」に面と向かった人々の多くが「先生」と呼称する。
やはり「師走」ということだろうか。
誠に慌ただしきかな。
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