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阿刀田高氏・朗読21公演「時空を超えて」

2012-10-26
小説家・阿刀田高氏の主催する「朗読21」公演を観た。今年のテーマは「時空を超えてー過去へ未来へ 朗読に乗って短編小説が翔ぶ!!」であった。阿刀田慶子氏・森ミドリ氏による『大きな夢』(阿刀田高著)。森ミドリ氏による『ふなうた』(三浦哲郎著)。阿刀田慶子氏による『老妓抄』(岡本かの子著)の3本に加え、阿刀田高氏の講演「小説家の工房をのぞく」が披露された。冒頭挨拶で阿刀田高氏から伝えられたのだが、阿刀田慶子氏は今月10日に自転車事故に遭い、足を骨折し手術後にも関わらずの公演であるという。こうした偶発的な災難に遭遇しながら、舞台朗読を最後まで完結する「プロ意識」を観たような気がした。

『大きな夢』では、エジプト旅行中に出逢った男女が、偶然にも新幹線の中で再会するという短編小説。その女性が示唆した香を焚いて眠りにつくと、「時空を超えた大きな夢」をみるという。男女の会話の機微を阿刀田慶子氏と森ミドリ氏が見事な間で再現していたのが印象的だ。『ふなうた』は、傘寿のお祝いを息子や孫から受ける老人が、昔満州で迎えた八月十五日の夜、ソ連兵の歌う「ふなうた」が蘇るというもの。凝縮された記憶が次第にほぐれるという機微を巧みに描いた作品。森氏のピアノ演奏が加わり「ふなうた」の響きが、いつまでの心に余韻を残した。『老妓抄』は、老妓である女性が若い電気技師に目をかけて好きな発明をするように支援するが、男が次第に無気力になって行く物語。阿刀田慶子氏の声との相性もよろしく、熱演であった。

今回、大変印象に残ったのは阿刀田高氏の講演でもある。「小説家の工房をのぞく」と題された内容で、既に鬼籍に入られた三浦哲郎氏や井上ひさし氏との交流における話などを交えて、小説ができる時の契機について語られた。「氷は0度になっても凍らない。そこに塵のような何かが付着して初めて凍結が開始される」という比喩に示されるように、「神の意志」ともいえる「不思議な飛躍的作用」が小説執筆の段階中にあるという。その実に軽妙ともいえる簡単なことができないことで、人生も変わるほどの大きな影響になることもあるというのだ。「道具は使われて初めて意味を持つ」というのは小説の執筆過程への思いであるとともに、社会が小説をどう受け容れるのかということへの小説家なりの意志であるように、僕には解釈できた。その道具の話と、井上ひさし氏との話が交響しつつ「武器は使われた時には人を殺す」という真理も提起された。そして武器の無い世界は、何世紀になったら実現するのかという、人類上の課題について「時空を超えて」行くに至る。「武器を持たなくなれば、戦争は無くなる。それが人間の叡智である。」と阿刀田氏のことばに深い共感を覚えた。

短編小説の中で翔び交う過去・現在・未来。
「時空を超えて」僕たちは叡智を全うに運用していかねばなるまい。
朗読で表現された小説世界にこそ希望を見出していくべきだろう。

阿刀田氏は挨拶の中で、今回の三作品は一見関係がないようだが、結果的にどこかで繋がりが見えて来るという。そんな機微を“読む”ことが、朗読という表現の可能性であるとも感じられた。

こうした公演を終えて新橋駅に至ると新聞号外を受け取った。
「都知事辞職新党結成」の大きな見出し。
この公演中に会見が行われたらしい。

「一見関係はないようだが」
僕は、小説家と朗読の声の可能性に
人間の“叡智”を見出す立場を貫きたい。
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