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歌丸師匠の柔らかな妙技

2010-01-08

7日(木)昼過ぎから新宿末廣亭の寿正月初席へ向かう。以前から寄席に行こうという話が持ち上がっていた、知り合いの大学生3人とともに初笑いに興じた。この日の第二部主任は桂歌丸師匠。加えて笑点でもおなじみの春風亭昇太師匠や三遊亭小遊三師匠も出演。そのおかげか、末廣亭に2時過ぎに入ると、かなり席が埋まっていて椅子席では4人がバラバラになってしまうというので、桟敷席の前の方へ。まあ正月ゆえ、座布団で寛ぎながら笑うのもいいだろうと思っていると、前座の落語が始まった。

 桟敷席は前後二列でお客が座っているが、色物を交えて前半の出演者が続く中で、前にいる中年男性が、いきなり携帯で話を始めた。それほど大きな声ではないが、話しているという事実が信じがたい上に、何とも目障り耳障りである。それほど長い時間ではないにしても、明らかにマナー違反。たぶん小生の顔は、この男性を見て迷惑そうに歪んでいたことだろう。

 そうこうしていると、今度はビタミンドリンクの瓶が入ったコンビニ袋を、手元から落下させ瓶が落ちる雑音を発生させる。出演者の「声」や「間」など全てが芸術であるという感覚を欠いた行為に、一層不快感は募る。

 お中入り(休憩)の後に、コントのWモアモアが、亀井大臣の話題を出した時、「あの寝癖はなんとかして欲しい」と揶揄したが、その前にいる男性にも寝癖あり。どうやら自覚していたのか、その寝癖に手を持って行って整える仕草。これは出演者の話芸のみならず、おもしろいことになったと、その反応に大きめの笑いを浴びせた。

 いよいよトリは歌丸師匠。さすが高座に現れるだけで割れんばかりの拍手。そして枕の話が始まった。すると何と!以前の寄席でという前提ながら、「寄席に来て携帯で話す不躾者」の話になった。併せて、「寄席で物ばかり食べている者」の話もあったが、この時は、何ともタイムリーだと、感嘆してしまった。以前に、歌丸師匠の楽屋から高座までを追いかけるドキュメンタリーをTVで観たことがあるが、師匠はその日のネタを寄席に入った時には決めていないという。その日の出演者が何を話すか、お客の反応はどうか、時勢はどう動いているか、などを総合的に感じ取ってからその日の出し物を決めるという。これぞ噺家という作法であることを思い出した。
 
 果たしてこの日の高座も、会場の雰囲気を読んだのかどうか?もしやモニターか何かで会場を見ていたのだろうか?携帯の話が出たとき、思わず小生は、前の中年男性に向けて「思い知れ!」という思いで、二重の滑稽さに興じたのであった。

 歌丸師匠のネタは、芝居小屋に鍋を持ち込ませる客の話。その場違いな行為は、鍋を用意した丁稚が、鍋を段々の下に置いていた時に、足で踏んでしまい、中身が崩れて豆腐などボロボロになっているという内容。おちは草履まで鍋の中に入っていたのを、食べていたというもの。まさにマナー違反には、大きな代償があるという噺であった。

 さすが歌丸師匠!その話だけでも、素晴らしい妙技であるが、それに加えて小生は二重の楽しみ方ができたというわけ。新春から痛快な気持ちにさせられたのだった。笑いの中に、マナー違反などに対する警鐘を、さりげなく滑稽になおかつ気丈な態度で差し込む。その方法自体、言うべきことは主張する態度に思えてきて、その絶妙な感じが深く印象に残ったのだった。

 寄席の後は、近くの中華居酒屋で新年会。餃子に紹興酒に舌鼓を打ちながら、落語のこと、話芸ということなどなど、大学生と楽しい話題に花を咲かせた。

 こうして七草も過ぎて、明日からは通常モードであると意識して就寝。
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