球場の歴史と野球
2012-09-14
野球に夢中になっていた小中学生の頃、よく後楽園球場に通った。家から自転車で行ける距離だったので、ある意味で気軽に日本野球の中心舞台に足繁く行くことができた。そこでは、王貞治がベーブルースの本塁打記録に並び、その数を抜き去るという歴史のある2本の本塁打を眼前で見届けることができた。確か王貞治の714号は、右翼ポールに当たり一瞬間があき審判が本塁打を示すジェスチャーをし、その後ゆっくりと各塁を回り始めた絵が脳裏に焼き付いている。あの時、確実に歴史を見届けた気がした。後楽園球場は、まさに日本野球の歴史舞台だった。その舞台も今やドームに姿を変えてしまった。MLBで最古の球場は、Boston Fenwayparkである。今年開場100周年を迎えた。まさにMLBの歴史そのものを背負って今なお現役球場として、Bostonの街の名所として存在している。本拠地チームのオーナーであるRedSoxの現オーナーはこう語った。
「パリにエッフェル塔があるように、
BostonにはFenwayparkがある。」
その文化的遺産ともいえる球場を舞台に、様々なBaseballが展開した。MLBの各球場では、現代的技術を駆使し新たな感覚のデザインにより新設された球場も多い。それに比してFenwayparkは、古いゆえに3万7千人程度しか観客が入れないこと。座席によっては柱が邪魔して試合がよく見えないこと。座席の配置による導線構造が効率的ではなく出入りがしづらいこと等々、問題点は多い。経営を考えたら新球場を建設した方が球団にとって得策であるはずだ。しかし、この球場を維持すべきという意見が、ファンの中にも根強い。文化遺産たる歴史的舞台は、簡単に更新してはならないのだ。
この100年に及ぶ歴史の10分の1ぐらいの間を、僕もこの球場を本拠地とするRedSoxを応援し続けている。その間に2度のワールドシリーズ制覇という歴史にも(TV観戦ながら)立ち会えた。今年は100周年を記念するメッセージ入りのブロック1片を寄付した。外野席方向にある入場ゲート近くの地面にそれは埋め込まれている。今後は、その文化の一端に参加する思いを込めて。
何事も新しくしていくのは、むしろ簡単なのかもしれない。歴史を背負った舞台を保存し、新たな時代にも対応させ何かを継承していくことは難しい。経済効率最優先の時代にあって、それは尚更に困難な話になりつつある。だがしかし、そこで考えたい。その場所が背負っている歴史とは何か。現代はあまりにも文化的な歩みを軽視し過ぎていないだろうかと。
このBostonの一球場が、現代に語り掛けるものはあまりにも大きい。
たかが野球、されど野球。
今後もBaseballを文化として見守り続けたい。
それは僕の“主専攻”ではないライフワークでもある。
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