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空間とライブ性〜ギターラ&ユモレスカ

2012-09-02
映像もことばの伝播にしても保存されたものが飛び交う世の中。そんな中で、ライブ性であるからこそ実現できることの価値が高まる。共有した空間で発せられる生の声。何よりも人間的であり“届ける”意志が感じられる。また音楽においても、即興性を活かした意外性に聴く者は魅了される。その空間の広さと演者との関係性にも多様な要素が介在する。

神保町のBon Vivantにて、懇意にしている春口あいさん・下舘直樹さんが「ギターラ&ユモレスカ〜スパニッシュギターと、ユーモア小品の夕べ」を開いた。企画段階から店主とお二人との双方に関わって来た身として、大変楽しみな夜となった。そのパンフのあいさつ文に次のような気になる一節があった。
「空間が小さいからこそ出来る事」
そう、カウンター7席に数えるほどのテーブル席という定員15名ほどの、決して広いとはいえない空間だからこそできることとは何だろうか。このような個人的な興味を抱きながら、ライブが始まった。

あいさんの朗読は、チェーホフ作の『薬剤師の妻』『郊外の一日〜ある小景〜』の短編二作。比較的小さな場を舞台にした、登場人物の内面を描く作品である。決して劇的な展開を孕んだ小説ではないが、“あるロシアの光景”が人のことばを通じて浮き上がってくる。そこに出てくる人物の言動に思わず笑いがこぼれる。まさに静的な感覚で味わってこそ、深みがわかる“大人ための作品”といえるだろう。その登場人物たちの内面が小さく揺れ動く筋書きが、この日のライブ空間に実によく適合していた。場と作品選択、表現者のあり方としてあいさんの実力を見る気がした。

暫くは朗読の背後に潜んでいた、直樹さんのソロギター演奏の時間もまた素敵。「Fly me to the moon」「Alhambra」などの曲に加えて、ご自身で書いた曲「Spark」や「Made in Japan Medley」など。スペインギター独特の切れのある絃の響きとリズムが、間近で鳴る迫力は抜群である。時折、そのMCに含まれる、何ともいえないユーモアが自然と聴く者の心を和ませていく。特に第二部で演奏された、来場者個々へ贈るメロディーは秀逸であった。一人一人の名前を聞いて、その場で即興で絃を響かせる。一音目にどんなイメージを持てるかによって、後はご自身の感性でリズムの刻んでいくのだそうだ。まさにライブでの即興性でなければできないこと。音楽の新たな楽しみ方に出会った気がした。

二部では、会場のリクエストにより、あいさんの十八番『空飛ぶライオン』の朗読も披露された。そして二部までの公式プログラムを終えてからというもの、なお一層、聴衆とお二人の距離は密接となり、直樹さんのギターが様々な音色を響かせ続けた。それはフラメンコからロックに至るまで。そして会場に居る人が詞を即興で付ける、「今夜限りのブルース」のコーナー。事実上、第七部?までとなるような大人の楽しい宵のうちとなった。

人がことばを語ること。
人が絃を響かせること。
その素朴にして奥深い世界に
聴く者が密接に心寄せる空間。
まさにこのお店だからできること。

一人が一人を尊重し語り合う関係。
ライブ性の原点はここにあるのではないだろうか。
お店と出演者双方の魅力が見事に融合した
夏を見送る素敵な夕べであった。

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