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場の流れに乗るー未完の妙

2012-08-26
昨年まで1年半ぐらいの間に落語を学んだ。その際に師匠から指摘を受けた重要なことは、「説明し過ぎ」という点である。教壇経験が長いゆえに、聴衆全員に「理解が行き渡る」ことを念頭に語る“性癖”が染み付いている。わからない者、いわゆる「落ちこぼれ」を作らないようにせねば、という意識が自ずと説明を過剰にする。良く言えば「丁寧」、悪く言えば「くどい」のである。たぶん、教壇に立つ者は、程度の大小はあれ聊か経験があるのではないだろうか。

神保町のBon Vivant主催による「屋形舟の会」が行われた。昨年来行われているこの会は、フォークシンガーの浜田伊織さんが船上LIVEを行う。昨年、僕の落語修行発表会を観に来てくれた店主が、このLIVEの前座として「落語を一席」と勧めてくれた。願ってもない場であると思い、この“大役”を引き受けることにした。それにしても今回は、昨年の修行と違い、短期間で何らかのネタを披露できる状態に作り上げなければならない。自分で自分を追い込みながら、自らの語り能力を試すような機会であった。

昨夜、聴いて下さった方々がどのようにお感じになったかはさておき、僕の中では練習不足が否めなかった。噺の筋は一通り頭に入ってはいるが、所作を始めとする表現がどこまで効果的かは疑問であった。しかし、不思議なことに昨日、屋形舟の出港する品川に向かう際には、殆ど楽しみな気分になっていた。そして直前に原稿を見直すとか家でリハーサルをすることよりも、早く品川に行きたくなった。

集合時間より早めに品川に到着。出向いたのは旧東海道の宿場が立ち並んでいた地域。京浜急行の新馬場で下車した。地元・品川神社にこの日の芸の成功を祈願し、旧東海道のあたりを散策した。本陣跡などいくつか江戸の面影を今に伝える街の光景にふれながら、次第に気分を高めて行った。あとは屋形舟に乗船する桟橋に至り、この日の来場者と様々な懇談を繰り返した。

もはや、直前に噺を“なする”ことよりも、現地がどんな雰囲気になるかを捉えることに気持ちを注いだ。そして前座の時間となった。ここからはまさにLIVE性そのもの。聴いて下さっている方々の気分を、自らの語り世界とどのように同調させていくか。最低限の説明で、どのくらい想像力を働かせていただくか。「場の流れに乗る」といった気分で落語は進行した。そして予想以上に皆さんそれぞれが楽しむ笑顔が見えた。

完成度からいえば、たぶん70%ぐらいであろうか。
その“未完”な噺こそが、聴衆を大切にする結果となった。
多くの方が、面白かったという感想を述べてくれた。

野球の経験がある方ならわかるであろう。
70%の力の入れ具合こそが、最高の飛距離を生むことを。
力任せに力んだスイングに妙はない。

聴衆が想像をする余白。
学習者が自ら質問する余白。
語り過ぎない。

まさに未完の妙を体験した気分だった。
落語からまた一つ学んだ。
さて、次はこのネタを師匠にご指導願うことにしよう。

「品川心中」でございました。
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