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映画「ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳」所感

2012-08-18
どれほど自らの命を燃やしているか。生きるということに真摯であるか。そして本気で信念を貫けるか。この人の生き様を見るに、こんな問い掛けに対して、全く多くの人々が妥協にまみれて生きており、自分自身が情けなくなるほどの感情を禁じ得ない。報道写真家 福島菊次郎90歳。人は年齢に比例して衰えるのではなく、より強靭になっていくのだということさえ感じさせる。真の報道カメラマンの姿がそこにあった。

映画冒頭で福島が語る。
「問題自体が法を犯したものであれば、
 報道カメラマンは法を犯してもかまわない。」
この鮮烈なことばに心を鷲掴みにされた。
往々にして、形式や型にばかりこだわる表面的な報道ばかりが目につく昨今。
福島の持つカメラは、常に真実に噛みつき炙り出そうとする鋭い感性を写真に変換する。


第二次大戦における一兵卒の体験。ヒロシマでのヒバクシャとの出会い。その被害の実情を写真に収めようとして、家庭に足を踏み入れたことへの悔恨。だが、その混沌とした撮影への姿勢が、被爆者である被写体の方から「俺の仇をとってくれ」ということばを引き出す。福島の報道写真家としての原点がそこにある。

以後、三里塚闘争・安保・安田講堂・水俣・ウーマンリブ・祝島などの戦後日本の闘争の歴史を次々とカメラに収めてきた。その数、25万枚。特に、表面に出ずに隠蔽されてきた闘う者たちの表情が写し出されたものの印象は鮮烈だ。戦後史とは闘争を蹴散らしてきた体制側に理があるのではなく、こうした自らの生き様を闘うことで守り抜こうとした人々の歩みであることを、心底感じさせる写真の数々である。福島の写真が本来的な意味で真実を含み込んでいるのは、被写体と距離を置いて撮るのではなく、被写体の立場に完全同化して撮影するからである。ある時は、警察の過剰な警備から身一つで逃げ切ったという。

こうした自らの生き方を、嬉しそうに語る福島には、微笑ましささえ感じる。愛犬と共に暮らす生活。国の嘘を暴こうとしているのだからと年金受給は拒否。過去には無人島での自給自足の生活をしたこともあった。胃ガンに侵され手術を受けたことも。また撮影が原因で暴漢に襲われ、自宅を放火されたことあった。愛娘がネガを自宅から持ち出してくれた。そんな折々の話が、90歳の口から淡々とかつ楽しそうに語られていく。その日常生活の随所を写し取った映像とともに、そのユニークな語りは観ている人を飽きさせない。

「表に出ないものを
 引っぱり出して
たたきつけてやりたい。」

この映画を観て、
そしてまた福島の撮影してきた25万枚の写真に今後も触れることで、
戦後に作り上げられた
「ニッポンの嘘」を
僕たちが自覚すべきではないだろうか。

現在、「写らなかった戦後 ヒロシマからフクシマへ」を執筆中であるという。
旧式ワープロで刻まれるそのことばが、今から楽しみである。
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