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馬鹿でごめんよー『杜の詩』と若山牧水

2023-09-19
「降ればかくれ曇ればひそみ晴れて照るかの太陽をこころとはせよ」
(若山牧水・全集未収録歌)
「大馬鹿になるための方法」そして今

沼津市のHPを検索すると「ぬまづの宝100選」の中に「千本松原」が数えられている。そこには「日本の白砂青松100選の一つ」ともあり、この松原が、現在へ継承されて来た深い意味が実感される。晩年、沼津に居を構えた若山牧水は、静岡県がこの松原の伐採計画を進めようとしているのを知り反対運動の先頭に立つ。それまであまり社会的な運動に関心を示して来なかった牧水だが、富士を望む大自然の一部である松原の伐採をどうしても許せなかったのであろう。牧水はじめとする反対運動がなかったら、現在の「ぬまづの宝」は大きな一つを失っていたことになる。その地は古来から、多くの詩歌に詠まれたまさに名勝である。長い年月に引き継がれて来た自然を愛する優しい心を、牧水が僕らに「Relay」してくれたわけである。

サザンオールスターズの新曲「Relay〜杜の詩」がリリースされた。国立競技場にほど近い神宮の杜を望むスタジオでデビュー以来、音楽を紡いで来た桑田佳祐さんのメッセージソングである。周知のように神宮の杜は都の再開発計画が進み、多くの樹木が伐採され伝統ある球場や競技場が新たなものに建て替えられようとしている。歌詞では「自分が居ない世の中 思い遣れるような人間(ひと)であれと」訴えている。これを考えた時に、まさに牧水は「自分が居ない」永遠の自然を「思い遣れる」人間であったことになる。歌詞の中でまた目を引くのが標題にした「馬鹿でごめんよ」の一節である。詩歌や音楽に夢中になって生きるということは、ある意味で「馬鹿」ということなのかもしれない。冒頭に記したのは、全歌集に未収録の新発見の牧水の歌。何某に「大馬鹿になる方法」をと乞われて作歌し条幅に揮毫した一首として、宮崎県立図書館に保管されている。「太陽をこころとはせよ」利欲なく自然そのものを敬愛する「馬鹿でごめんなさい」。

神宮外苑には幾多の思い出が僕にもある
それを過去のものとは決してされたくはない
都会のオアシスは100年後の東京の宝のはずだが・・・


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