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故郷・恋・自然ー若き牧水から現代へのメッセージ

2023-09-10
「父母・恋人・旅人」
人はどこから来てどこへ行くのか?
内に外に世界を多面的に見るために牧水から学ぼう!

若山牧水没後95年特別企画公開講座「若き牧水から現代へのメッセージ」開催当日となった。夏季休暇中で学生の姿もまばらなキャンパスに、遠くは延岡など県内から多くの方が聴講に来ていただいた。公共交通機関の利便性が高いわけでもない郊外型キャンパスでの開催は、常に来場者の人数が懸念材料となる企画でもあった。数年のうちに宮崎駅付近に新キャンパスが完成し、大学の機能の一部(現キャンパスはもちろん存続するが)を移転することになっている。このような昭和・平成と歩んで来た土地造成と自然との関係という課題を私たちはどう受け止めたら良いのだろう?今回の講座では、若山牧水の23歳から27歳頃の短歌、第一歌集『海の聲』第二歌集『独り歌へる」第三歌集『別離』第四歌集『路上』の歌から、どんな現代へのメッセージが読み取れるかをテーマに、若山牧水記念文学館館長・伊藤一彦先生と若手歌人(当時の牧水と同世代)狩峰隆希さんをゲストにお迎えしてのトークを開催した。

若き牧水の歌を考えるに自ずとテーマは「故郷・恋・自然」となった。「故郷」は引き剝がし難く「父母」への思いへ連なる。「父母よ神にも似たるこしかたに思い出ありや山ざくら花」という伊藤先生が引かれた歌には、父母への畏敬の年が滲み出る。誰しもが例外なく思いを抱く父母との関係、親の意に反し故郷を離れた牧水の思いには複雑で哀切な心を読み取ることができる。家族の問題が様々な波紋を投げかける現代社会、明治以降の家族観念の変化を相対化するためにも牧水の歌から学ぶことは多い。三者が意図せず選んだ歌が、『路上』の連作部分であった偶然もよろしき資料の構成になった。父母への思いをいつしか上回るのが「恋人」への思いである。若き牧水の熱烈な恋には、身を潰すほど生命を賭した純朴さがその歌から読み取れる。情報過多な現代にあって、果たしてわたしたちは「恋」をあまりに軽薄に考えていないだろうか。こうして人は父母・恋人やがて伴侶との人生を歩み行く。その歩みそのものが「旅」であり、特に牧水は「自然」と親和的にその身を等価に考えている。自然を捉えるのは眼ばかりではなく聴覚を始めとする五感のすべてである。スマホが全盛の社会でわたしたちは、このような本来は「自然」たる人間の知覚を忘れているのではあるまいか。講座内容はまだまだ書き尽くせないが、大筋を示すことで本日のところは筆を置きたい。

沼津千本松原伐採反対の論陣を張った牧水
故郷・坪谷への深い哀切は「母=マキ」に託し「牧水」の「牧」として背負う
読めば読むほどいとしい、生誕140年は2年後、そして没後100年に向けてさらに愛し続けたい。


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