「網目の法則」から平和を築ける世界へ
2023-05-22
「人はーほんとうは人だけでなくあらゆるものがー互いにある深度で交わりながら存在している。目にみえない関係のなかにいる。
それはまるで、網の目のようにつながりあっている。」
(『読み終わらない本』若松英輔 P92より)
冒頭に敢えて引用したのは、ここのところ一章ずつ噛み締めながら読んでいる若松英輔のエッセイから。有名な吉野源三郎『君たちはどう生きるか』を紹介し、そこに説かれた大切な世界観を若い人向けに平易に説いている。世界を「体験」する「情報」だとしか考えない者に、この「網の目」は決して見えない。同書には「情報は道路の標識のようなもので、真の目的はその先にある。」(P81)ともある。その上で「真に経験と呼ぶべき出来事は、その人のなかで種になって時間をかけて育っていく。」(P82)ともされている。道路標識の「止まれ」を道交法上の「情報」としてだけ受け取っていては、その路地に子どもが飛び出してくるかもしれないという想像は働かない。「法律により引かれた白線の手前で車を一時的に完全停止させる」という行為をして「違反取り締まりに捕まらないため」というのは浅はかな体験的行動に過ぎない。「自分の母親がその道路を横断している」ことを想像し、「車を完全停止させて安全を確かめる」ことを思う人でありたい。
G7首脳の広島平和記念資料館での見学内容は「非公開」だと報道された。さらに昨日は、ウクライナのゼレンスキー大統領も緊急来日し平和記念公園を訪れる映像をみた。G7各国首脳らは果たしてどれほどの「深度」で見学し、「その人のなかで種になって時間を掛けて育っていく。」つまり若松のエッセイに云う「経験」にできたのだろうか?と疑問に思う。そこに「網の目」を見られたかどうか?その「深度」を世界に報じるのは、「不都合な真実」の箱が開いてしまうのだろうか?「非公開」と云うメッセージに、むしろ「だから核兵器は無くならない」という失望が含意されていないだろうか?前項で述べた「一時停止の路地」に「子どもや自分の母の横断」を想像する人間が本来もつべき「こころ」を、せめてこの地球で「先進国」などと呼ばれる国の為政者としてもっていただきたい。世界の「網の目」がどこかで破れていると、「次第に全体が壊れていく」(若松同書P92)ことになる。「G7の結束」否、人類の叡智とは、あらゆる世界の人々が文学的想像力で目に見えない「大切な人への愛情」を「一時停止」の際に思うべき社会を築かなくてはならないのだ。
祈れば必ず通じ合える「コトバ」
友とはお互いの「網の目」をわかり合える人のことだ
研究学会や友との大切な「網の目」を東京で感じ、夜に宮崎に帰り着いた。
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