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歌を詠む立場からの中古和歌文学研究

2023-05-21
研究の分業化と細分化
注釈類が揃いデータベースの充実など
だが歌を詠む立場からの視点はあるか?

佐佐木信綱は万葉集研究者であり歌人であった。明治時代には普通であったこの「二刀流」が、今や特別なものになってしまった。いま「二刀流」と書いたが、大谷翔平がベーブルース以来と言われる特別感は、ルースの時代には「普通」のことだったのかもしれない。現代の野球は先発完投型の投手は少なく役割が分業化・細分化され、ましてや打者との兼業など特別以外のなにものでもない。だが少年野球や高校野球を見れば明らかなように野球の基本は一選手が投げて打って走ることだ。この分業化・細分化という流れは、僕たちに基礎基本を忘れさせてしまってやいないか?いま一度考え直し「二刀流」を賞讃していくべきではないだろうか。

中古文学会春季大会に出席した。初日のシンポジウム「中古和歌研究の現在」は、鈴木宏子氏の司会で武田早苗氏・田中智子氏・西山秀人氏による基調発表と討議が行われた。鈴木氏の趣旨説明にもあったように諸注釈類が整いデータベース検索の充実など、研究環境は大きく進化した。同時に「中古文学研究者」であれば、物語・日記を対象としていても「和歌研究」は必須であるし、さらに言うならば「漢籍研究」も必須である。だが細分化・分業化の流れは戻すことができず、一点にのみ奥深い視点から対象が分析されていることが少なくない。正直なところ僕なりの視点からこの日のシンポジウムを考えると、明らかに足りないのは「歌を詠む立場で考える」ことだ。詳細なデータ比較解析・表現比較・文法的解釈などは一点に奥深いが、歌の文脈や詠歌の場を考える視点がない。大谷翔平のように全ての分野で破格な能力を発揮しないまでも、せめて作歌の現場を考える視点をもって「中古和歌文学」に向き合いたいとあらためて思うのである。

対面開催で懇親会もあり
終了後は約束していた親友と大切な時間を
あらゆる「いのち」の「コトバ」を聴くために。


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