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半覚醒に言葉を捕まえるー俵万智さん #プロフェッショナル

2023-02-28
半覚醒でポコリポコリと浮かんでいる
言葉になっていないものを言葉で捉える
「むっちゃ夢中とことん得意どこまでも努力できればプロフェッショナル」

NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」が、俵万智さんを密着取材した。宮崎在住の6年半は諸々な機会に交流させていただいたが、親しいながらもその私生活は月並みな言い方だがベールに覆われていた。一般の方々が観てももちろん短歌への興味が半端なく高まる内容であったが、歌を嗜みご本人をよく知っている者としてたぶん何百倍も楽しめる番組であった。短歌が生まれる端緒は机に向かうとかではなく、移動中とか蒲団の中で浮遊する言葉を捕まえるという感じ。よく小学校などでは静かな教室でノートに無言で向かわせて短歌(または他の詩歌や作文)を作らせているのが、いかに「創作」の態度と乖離しているかを痛感させられる。「素材は日常にある」が近現代短歌が成してきた「流儀」であるが、それをさらに具体的でより容易に身近な日常に近づたのが俵万智の1300年の短歌史上で他者にできなかった功績ということになるだろう。

以前から密かに思っていたが、俵さんと同じタイプの手帳を僕も使用し既に14年目となる。宮崎歌会などお会いする場でそれを確かめる度に、僕はニヤリと心の中でほくそ笑んでいた。その手帳は「何気ない一日が特別になる」というような制作意図を標榜しており、それが俵さんの歌作りの「流儀」に一致しているとも思っていた。今回はあらためて映像を見て、宝の持ち腐れにならぬように自らの使い方も変革すべきと考えた。などと思い昨晩の就寝時には寝床に持ち込み、今朝までに一首の歌ができた。俵さんは手帳に手書きされた「素の歌」を、次はPCに文字として打ち込んでいく。最終的に「活字」になるのが「短歌」であるとすると、この作業で歌を他者がどう読むかが次第に見えてくるかのようだ。その過程でも文字のみならず、声に出したり瞑想的になったり錯綜したりをくり返しているように見えた。短歌を投稿するまでの仕上げとして、打ち込んだ短歌を短冊にし、「最後のご馳走に涎が出てしまう」と冗談交じりに連作の並べ方と多めに作った歌の採否を決めていく。俵万智さんの学部卒業論文が「連作論」であるのは有名であるが、その秘訣にこうして「美味しく並べ方を楽しむ」という秘密があったのは、多くの短歌人にとっても目から鱗であったのではないか。とりあえず40分間を1回観たが、録画を何度も見返すとさらなる小さな発見として、自らが活かせそうな「流儀」が山積しているように思っている。

仙台への引越し直後からの取材
宮崎の大切な場所に立ち寄った場面も
しばらくして落ち着いたらぜひご本人に感想をお送りしようと思っている。


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