NHK短歌3月号「覚えておきたい古典和歌」執筆 #NHK短歌
2023-02-25
平安朝の歌人「伊勢」2月号3月号と連載にて
宮中の恋愛生活と長恨歌屏風代作歌について
NHKテキスト「短歌」2月号3月号の二連載にて、「覚えておきたい古典和歌・伊勢」を執筆させていただいた。現在、3月号も発売になっているので、よろしければお読みいただきたい。もとより平安前期の宇多朝時代の和歌については専門とするところであるが、あらためて「伊勢」という宮中女流歌人の先駆けのような存在について、深く考える良い機会をいただいた。「伊勢」の和歌については『全注釈』もまとめられているが、読み直すと様々な問題意識が芽生えて来る。『百人一首』19番歌「難波潟短かき葦の」の歌によって「伊勢」を女流歌人と認識知る方は多いだろうが、私家集である『伊勢集』を紐解くと、当該歌は作者未詳歌で「伊勢」の歌とは断定し難い。また女性が宮中という場において歌を詠む行為そのものを、特に宇多帝の後宮における擁護によって進められたことも和歌史の上で重要である。
また当時にして「代作歌」が公の場で求められていたことは、3月号に書いた「長恨歌屏風」の歌の存在で知ることができる。中唐の詩人・白居易の詩文は平安朝に輸入され、貴族の間では大ブームとなった漢籍である。唐の玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋物語を題材に、白居易が長編詩でその具体的な折々を物語的に語る漢詩文である。高等学校教科書にも現行までの「古典B」などでは必ず採録される教材だが、学部生に聞くと学んだ経験がある者は三分の一以下であり高校教員の意識を問い返したくなる。つまり『源氏物語』桐壺(特に冒頭)を学ぶには、『長恨歌』の由来を知ることが必須であるにも関わらずである。詳しくは今回、NHKテキスト連載に書いているので、ここではこのぐらいにしておこう。最近、興味深いのはNHK朝の連続テレビ小説「舞いあがれ」の貴司くんや秋月史子の「代作歌」を俵万智さんが、Twitterにて「止まらない」などと衝動を持って投稿していることだ。ドラマを観るには感情移入が必須と思うが、まさに作中人物に成り代わって短歌で心の丈を述べるという高級な味わい方が素晴らしい。まさに「伊勢」が「玄宗皇帝・楊貴妃」の立場でその心を詠んでいるのと同様の楽しみ方が、短歌という1300年の歴史の上で行われていることに注目したい。
短歌の演劇的要素としての代作
人物のキャラをどう捉えて詠むか
和歌と短歌が通底する要素をさらに深く追究してゆきたい。
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