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第34回歌壇賞授賞式参列記

2023-02-12
「彼岸へ」久永草太
大雪警報の出ている東京・アルカディア市ヶ谷にて
選考委員の方々・心の花東京歌会のみなさんとも

2月10日(金)短歌会の最も有力な新人賞といえる「歌壇賞」授賞式に出席するため、大雪が心配される東京へ向けて朝の便に乗り込んだ。予期せず時間に余裕をもたせて朝早々の便を予約したのだが、せめて降雪が激しくなる前に羽田空港に着陸してくれと、祈りながら座席のシートベルトを締めた。翌日が祝日のせいか、機内は満席でどうやら左右にご夫婦という真ん中の席は多少落ち着かない1時間半となった。だがあらためて今回の受賞作「彼岸へ」を読むに、次第に今この時間の状況などどうでもよくなった。一首一首の骨格のある表現の豊かさとともに、僕にしか読めない具体的な情景もある各歌の奥行きを味わいつつ選考委員座談会などを読み返していた。すると瞬く間に機体は着陸態勢に、窓からはまだそれほどの降雪は認められなかった。機内アナウンスは「みぞれ」を告げ、駐機場ではバス移動。まずは宿泊先に荷物を置き、昼食を済ませ午後はやるべきことを着々とこなした。どうやら「大雪警報」は午後2時前後に解除になったようで、雨は降り続きながら気温4度の東京の街を、市ヶ谷へ向けての地下鉄に乗った。会場のアルカディア市ヶ谷は、別称・私学会館。長く東京の私立中高に在学・勤務をしていた僕にとっては、お馴染みの場所でもあった。

16時45分の開場に向けて建物内を進むと、中学校の恩師の結婚式を思い出した。野球部監督の先生の披露宴に、予告なしに花束を持って入り込んだ思い出だ。会場と窓からの外堀の景色の対比は、確実にあの時の「風景」であった。会場には既に「心の花東京歌会」の方々が、今回の牧水賞受賞者の奥田亡羊さんをはじめ黒岩剛仁さん・田中拓也さん・佐佐木頼綱さんらに会えた。また選考委員の東直子さんは、国文祭・芸文祭の折に大学図書館で開催した「みやざき大歌会」以来であり、牧水研究会で馴染みの宮崎出身である吉川宏志さんにも久しぶりにお会いできた。授賞式は「俳壇賞」と合同であり、まずは渡部有紀子さんへ賞が授与され、その後、いよいよ久永さんが受賞の壇上に登った。僕にとっては宮大短歌会顧問として、在籍中の受賞というのがこの上なく嬉しい。それは大学のみならず、宮崎が生み出した新人という意味で「短歌県みやざき」の喜びでもある。宮崎から列席したのは久永さんの恩師3名、伊藤一彦先生はもちろん、彼が短歌と出会った際の高校の恩師、そして大学6年間短歌会に在籍した顧問の僕。僕などは「恩師」というのはおこがましく、久永さんからはむしろ多くの刺激と学びを得た「短歌仲間」というような思いでいる。選考委員講評は、三枝昂之さん。委員4名の中では、当初は久永さんの作品を推していなかったことを吐露しつつ、自らがどんな魅力を読み取り変容したかを克明に語っていただき聞き応えがあった。授賞式後は心の花東京歌会の方々と一席、市ヶ谷という土地は宮崎県学生寮もあり、牧水も居住したことのある街。短歌を取り囲んで集える結社の方々との交流は、何にも代え難い時間だ。楽しい宴はあっという間、だが受賞者と選考委員との宴の方は未だ続いているようで、その後は伊藤一彦先生とその場に挨拶へ向かう。その結果、選考委員の方々や本阿弥書店社長さんらとさらなる三次会へ。三枝さんや俳壇選考委員の方ともお話しできて、夢のような時間を過ごさせていただいた。

タクシーで神保町経由で宿のホテルまで
東京に24時間ともおらず翌早朝から甚だ混雑する羽田空港へ向かい、宮崎への搭乗便へ
あまりの奇遇、「群読フェスティバル」に招聘した真山知幸さんと座席が隣であった。


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