「夏を歩く」×「五月の空〜宮崎市と戦争と〜」朗読劇公演
2022-12-13
「今を戦争前夜としないために」語り継がねばならない1945.8.6
主演;田中健さん そして宮崎の1945.5の惨禍
ここのところいくつもの舞台に身を委ね、様々なことを疑似体験している。題材が史実であれ虚構であれ、考えさせられる真実は同様で一時的に日常でない自分になれることに大きな意義を感じている。この日は標題とした朗読劇を、宮崎市内まで観に出向いた。主演は俳優の田中健さん、僕にとっては青春ドラマ『俺たちの旅』での「オメダ」役から親しみのある俳優さんだ。青春期には「なりたい自分」と「そうなれない自分」に向き合う葛藤が常に付き纏う。同ドラマで中村雅俊さん演じる自由奔放な「カースケ」には誰しもが憧れたものだが、田中さん演じる「オメダ」がいることで、そこまでは大胆な行動はできない「自分」を逆照射されるようで青春の葛藤が上手く描かれていた。その田中さんの生声による朗読は、実に楽しみだった。かの1945.8.6.8:15広島で誰しもが個々の「朝」を迎えていた。「広島第一県女の生徒たち」の「朝」に焦点を当て、凄惨な「ピカッ」が彼女らの「今日」を一変させる怖さが実感できた。「戦争」はいつも一般の人の日常をかくも悲惨な「日々」に変えてしまうのだ。
「夏を歩く」の前に上演されたのが「五月の空」、本公演の特徴は地方公演を巡りつつ当地の戦争の記憶を風化させないための朗読劇が組み合わされていることだ。この宮崎にも1945年当時には空襲が相次ぎ、多くの人々が犠牲になった。赤江空港(現宮崎ブーゲンビリア空港)に空軍の拠点があり、鹿児島のみならず多くの特攻機がこの宮崎からも飛び立ったことを忘れるべきではない。それゆえに宮崎市を中心に空襲も増えて、多くの一般の方々の「今日」が変わってしまった。以前から附属小中学校に行くと、門のすぐ脇に慰霊碑があり実習生なども必ず登校すると手を合わせる慣習となっている。かの「五月」の空襲で、下校途中だった小学校の生徒らが犠牲になってしまった。なぜ?軍事拠点でなく文教地区に爆撃があるのか?「戦争という名の狂気」には、そんな「なぜ?」はまったく通用しないことは現在のウクライナを見ても明らかだ。戦争が起これば必ず「弱い者が犠牲になる」、あらためてそこに生きた人々の叫びが朗読劇で再現され僕らの胸に突き刺さったのである。
朗読の声を語り継ぐこと
どこまで表現したら真に伝わるのであろう
舞台と表現の可能性を見つめ続けたい。
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