自律的契機ー好き・楽しむ・浸るから始まる国語
2022-08-07
「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」
「学びに向かう力・人間性」ここを出発点として
日本国語教育学会主催「国語教育全国大会(オンライン)」が、2日間の日程で始まった。僕自身が宮崎県理事を務めるこの学会では、昨年(2021年)6月に「西日本集会宮崎大会(オンライン)」を主催し「短歌県みやざきの授業実践」という特集テーマにて実施した。「短歌学習材」に焦点化された内容は予想以上に好評で、シンポジウムには俵万智さんにもパネリストに加わっていただいた。今回は2日目の校種別分科会小学校の部において「指定討論者兼司会者」に指名いただき、「課題を形成する」というテーマの分科会を担当することにもなっている。初日のこの日は、「基調授業」が筑波大附属小学校の先生から提案された。「問い日記をつくろう」という単元名で、学習者自らが「物語」の問いを作り確かめ改めていくことが主眼とされていた。中でも注目したのは、学習者が「考える方法を自ら選ぶ」という方法を採用していたこと。これまでは指導者が「4人一組」などと決めた方法で話し合わせていた実践例が多かった。そうではなく、「一人」「ペア」「四人」「自由(途中で入れ替わる)」など主体的な活動をすることに新機軸が見られた。その後の授業協議では、「教室内を区切る」とか「教室から出ていく」という空間を超える「自律」の可能性を語る意見も出され、学びの(主体的)自由度を上げ個別最適を選ぶことが肝要なのが確かめられた。
その後、学会会長である桑原隆先生により「展望」が語られた。前述した授業の方法が理論的に提唱されるような内容で、考え方を明確に整理することができた。冒頭に掲げたのは学習指導要領に示されている「何ができるようになるか(資質・能力)」の三つの柱である。これを「総合的にバランスよく育む」ということを目指して「教育課程全体や各教科の学び」が構成されることになっている。だが、現場の「国語」授業などを見る限りどうしても「知識・技能」が最優先で、言語活動を通して「思考力・判断力・表現力」については意識しているという程なのが実情であるように思う。「バランスよく」とは言いながら、三番目の「学びに向かう力」が後付けのようになっている場合が多いということだ。桑原先生の「展望」では、この力こそが出発点となり「好き・楽しむ・浸る・成就感・上達したい」というような情動(情緒)的なことから自律的契機を大切にすべきだという方向性が示された。従前より僕自身も「音読・朗読」を中心として、「楽しい国語」を目指すべきと様々な機会に提唱してきたが、この提案により方針が適切であったことが確認されたようであった。さらに「elaborated code(精密コード)」による言語活動が大切であり、「異文化・異コード」と接触し変換する力により、自律的契機はさらに発動するということだ。例えば、「異言語間変換(外国語翻訳)」「異コード間変換(絵・写真・図)」などを始めとして、「同一言語間」では「ジャンル(韻文⇄散文)文体(物語⇄脚本)人称(一人称⇄二人称・三人称)」間の変換が有効な言語活動として自律の契機となるということ。これまで「創作活動」の大切さを提案し「短歌⇄物語・脚本」などの活動を大学講義でも取り込んで来た僕自身の実践の方向性を、明らかに「展望」として照らされたようだった。早稲田大学国語教育学会を通じても大変にお世話になっていた桑原先生、西日本集会開催や今回の司会者などで、少しでも先生への恩返しができるものとあらためて感謝の念を深く抱く機会であった。
「好き・楽しむ・浸る・成就感・上達したい」
「正解探し」や「やらされる」国語授業はもういい加減におさらば!
日本の学びに一番欠けている「意欲的」に火をつけて豊かな「国語」の学びを作りたい。
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