一冊の歌集を読み通すこと
2022-05-01
若山牧水第一歌集『海の声』牧水再発見に向けてあらためて読み通す
若き牧水の未来への旅と希望と苦悩と
所属する短歌結社「心の花」の何年か前の全国大会にて、佐佐木幸綱先生が強調した言葉が頭から離れない。「時に1日を丸々かけて歌集を読み通すことが必要だ」と言うのである。これによってその歌人が「今も生きた存在か、それとも古い存在か、その真価がわかってくる」という効用があると云う。今年の『牧水研究』(牧水研究会発行)のテーマは、「牧水再発見」ということもあり、あらためて第一歌集から読み直してみるべきではないかと考えていた。今月から開講する大学公開講座にも牧水研究第一人者の伊藤一彦先生をゲスト講師にお招きし、4回にわたってテーマを定めて『海の聲』の魅力を再発見したいと考えている。牧水の名歌と評価される歌は、なぜ第一歌集に多いのか?既に苦悩を伴いつつ激しく燃え上がった恋のあり様が、若き牧水の短歌にどのような表現をさせ使めたというのか?今まであまり言及されていない問題は少なくない。
「明治四十一年七月十八日、東京市牛込区原町二丁目五十九番地、生命社発行。四六版、恩師尾上柴舟の序文二頁、自序三頁とあるが目次なはい。本文の歌は四号活字使用、三首組百六十頁、歌数四百七十五首、値段五十銭。表紙は薄茶色のクロースに平福百穂(ひらふく・ひゃくすい)の海の絵がカット風に入れてあり、雲と波は黒で、真白い一羽の鷗が豊かに翼をのばして飛んでおり、それに友人土岐善麿(当時、湖友、後に哀果)の筆になる『海の聲』という書名が金箔で押されている。」と大悟法利雄『若山牧水全歌集』(1975年昭和50年短歌新聞社)解説にある。読み進めるに、なぜ「海の聲」という歌集名にしたのか?「聲」を反転するかのように「沈黙(しじま)」という語彙使用が目立つこと、また歌集出版当時は明かされていないが小枝子との恋に没入し苦悩する思いがひしひしと伝わって来る。その純朴な思いに何度も「牧水!!!」と心の中で叫び、そしてまた若き日の熱い恋こそが歌人を、人を育てるのだと痛感されて来る。されど若いとはいえ既に牧水は多くの旅に、そしてまた自然の豊かさと自己存在を一体化させようとしている思いを新たにした。公開講座まで1ヶ月を切ったが、さらにこの歌集をどこまで深く読めるか、自分の読む力を楽しみに進みたいと思う。
これぞGWのありがたさ
昼食後には衣替えなどもして気分転換もし
父母との買い物も済ますことができ、思惑通りのGWの充実を成し得ている。
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