短歌県みやざきシンポジウム&みやたん追い出し歌会
2022-03-13
「短歌県みやざきの作り方」つながる力・拠点づくり・表現する手段を持つ県民
そして宮崎大学短歌会追い出し歌会へ
アーツカウンシルみやざきが主催する「短歌県みやざきシンポジウム」がオンライン開催された。以前から審議会として対話を重ねてきた高校教員・歌人協会の方々に加え、諸々の企画を展開してきた学生などが加わり、世代を超えた「短歌県づくり」について熱く対話をする機会となった。オンライン(zoom)には伊藤一彦先生もお忙しい中ご参加いただき、まさに県知事の公約を叶える「短歌県」を目指す議論が本格的にできた。前半は各活動報告、僕自身も「リーディング劇」「うたごはん」「ニシタチ歌集化プロジェクト」に自ら参加していたので、それぞれの動きに大きな意義と反響がある生の声も存分に知っていた。ともかく「短歌と劇」「短歌とごはん」「短歌と歓楽街」など、「短歌のちから」そのものが劇・グルメ・街を再活性化していくような展開が功を奏した印象だ。しかしシンポジウムで紹介されたアンケートデータによると、県民で「短歌に携わる人」の8割以上が「宮崎の短歌は盛り上がっている」と感じているが、高校生では反対に2割弱しか「短歌の盛り上がりは感じられない」と回答しているそうだ。それは僕自身が大学1年生の講義や県内高校への出前講義に赴いた際にも感じる印象で、より多くの一般の方々に「短歌」を感じてもらう機会が必要だ。シンポジウムで提唱された「つながる」を実現するためにも、県内・市内に短歌の拠点づくり(短歌サロン)も進める必要がある。カフェなどそこへ行けば「短歌が語れる」環境、高齢の方々が所持していた歌集本などを若い人に引き継げる場が欲しい。シンポジウムでは伊藤一彦先生にもコメントをいただいたが、「心を表現する手段を持っている県民」となり、「幸福度の高さ」の割には「自殺者が多い」という県の課題を少しでも「歌のちから」で解決に向かわせる動きができればという内容であった。学校現場で長年にわたりカウンセラーを務めてきた伊藤先生らしきコメントであった。
シンポジウム終了後、県庁近くの喫茶店に集まってオンライン視聴していた宮崎大学短歌会の学生らと合流し、今年度で卒業する学生の追い出し歌会を開催した。出詠15首、参加者9名、自由詠であったが卒業する学生に寄せた歌が並んだ。花が咲く・ウイスキー・ノート・いちご飴・到着ロビー・春告鳥・海底・象・どんぐり・麦わら帽・飴玉・玉子焼き・栄養素・初鰹など、素材は多様であったが、別れと出会いの春の香りが漂う歌会となった。現代的な素材であるにもかかわらず、どこか春の季節観を伴うのは「短歌」だからであろうか?『伊勢物語』にある「月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして」に表現されたように、自然という雄大な時間の流れの中に置かれた小さな人間存在などが浮かび上がる歌もあった。「待つ待たせる」関係もそうだが、人間である以上どこかで「孤独を孕む」宿命がある。それゆえに「短歌に表現することで人とつながる」ことが大切になってくる。文学に関わるということは、「私はひとりではない」ことを実感する機会でもある。宮崎大学短歌会の学生たちは学部も出身も多様であるが、「心を表現」することで在学時に自らを晒け出している。「自分を出す」そのものにも勇気がいる世の中で、それを厭わない学生の関係性は貴重だ。人に何も言われず批評されない学生時代では、自分自身が何たるかをわからないままに終わってしまう。どんな人生を生きようとも、自己表現をして開示し仲間との摩擦があってもその熱量を力にしていくような姿勢が必要だ。「心を表現する手段」があれば、世界は知的に平和であることをあらためて思うのである。
学生たちが「うた」に生きる
宮崎で学生短歌会の合同合宿を開催しよう!
「短歌県みやざき」は基盤よろしくまだ始まったばかりだ。
- 関連記事
-
- 「三十一文字にかけた夏〜熱闘!短歌甲子園〜」宮崎先行放送 (2022/10/22)
- 「短歌県みやざき」を目指すためにー宮崎県文化講座2022 (2022/09/11)
- 電報でも自己表現でもないー第12回牧水短歌甲子園準決・決勝 (2022/08/22)
- やはりライブ感ー牧水短歌甲子園3年ぶりの会場開催 (2022/08/21)
- 俵万智さん連載「海のあお通信」73回「若山牧水賞」 (2022/07/27)
- 第26回若山牧水賞授賞式ー黒瀬珂瀾氏「ひかりの針がうたふ」 (2022/07/19)
- 『日本の恋歌とクリスマスー短歌とJ-pop』書評掲載ー角川『短歌』6月号 (2022/06/03)
- 短歌県みやざきシンポジウム&みやたん追い出し歌会 (2022/03/13)
- 好きな短歌が好きになるサークル (2022/03/09)
- うたごはん最優秀選考歌会ー県民芸術祭短歌企画 (2022/03/07)
- 文学は死なずー『宮崎文学の旅・上下』宮日出版文化賞受賞 (2022/03/02)
- すべての子どもたちに文化体験を贈りたいー「正しさ」の脅迫 (2022/02/24)
- 「うたごはん」歌会ー「糀素弓(はなそゆみ)」編 (2022/02/23)
- 幸福度ナンバーワンの宮崎県どうして・・・ (2022/02/22)
- 伊藤一彦×中村佳文「クリスマスをうたふ 宮崎に生きる」その2 (2021/12/26)
スポンサーサイト
tag :