深いことを分かりやすくー俵万智さん宮日新聞連載「海のあお通信」
2021-06-29
19日開催「日本国語教育学会西日本集会宮崎大会」のこと秀歌に選ばれた3首の魅力を誰にも分かりやすく
「短歌県みやざきの未来が、頼もしい。」と締め括る。
宮崎日日新聞毎月第4月曜日には俵万智さんの連載「海のあお通信」が掲載される。俵さんが宮崎に移住した年に始まったので、かれこれ丸5年が経過し60本ほどの話題が展開したことになる。今までも何度かいささかは僕自身に関連した話題もあったが、今回は主催した学会の内容について「短歌県の授業」と題して詳報を伝えるもので、誠にありがたいものであった。毎回思うことであるが、俵さんの文章の明快さは誰もが認めるところだろう。記事として要点を分かりやすく伝える表現は、何より肝心なことである。学会当日の対話そのものもそうであったが、対話する相手の話を的確に捉えて、実は奥深い勘所を簡単な言葉で誰しもが分かるように伝えてくる。書き言葉でも話し言葉でも、双方に癖も難解さもなく表現者としていかに長けているかをひしひしと感じるのである。我々など研究者は、往々にして難解で分からない言葉を平然と学生や一般の方々に投げてしまいやすい。自らの表現が分かりにくいことに自覚的でない研究者は、その研究そのものを問い直した方がよいように思う。
今回の「海のあお通信」に俵さんが書かれた当日のシンポジウムの対話内容は、多方面から概ね好評だというご意見をいただいている。それは実践発表をした各学校種の短歌の全てを俵さんにお読みいただき秀歌3首を選んでいただき、その内容を具体的に対話の俎上に挙げたからだろう。そこが他の学会シンポジウムにはない「具体性・個別性」のあった特長ともなった。短歌そのものも「観念的」で具体性を欠くものはよしとされないが、研究者のみが参画する学会シンポでは往々にして理論的な空転になってしまう残念なケースが少なくない。学校現場で創作学習を進めるにあたり、指導者はどのような短歌をどのように評価したらよいか?短歌を褒める観点も修正を求める切り口も、当日のシンポジウムでは「秀歌3首」を具体的に論じたことで断然分かりやすくなった。さらにここで、僕だけが書けることを密かに記しておこう。角川『短歌』最新号(21年7月号)には迢空賞受賞を記念した俵さんの「笑いたい夏」30首が掲載されている。その中には、このシンポジウムのリハーサル段階で発想を得た歌があるのだ。自らが接するあらゆる経験から、前向きに肯定的に取材して表現する姿勢。あらためて表現者・俵万智を身近に感じたことで、僕自身が大きく変わる契機を得たような気がしている。
「子どもらのそばに短歌があることの陽ざしの恵み、海からの風」
(「海のあお通信」掲載歌)
短歌に携わる者として、これ以上の幸せはない土地に僕は住んでいる。
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