松明を次の人に手渡すために
2021-04-02
「小説はいま何かに役立つものではない、新型コロナに小説が役立つわけもない、
しかし、健全な社会のためには小説はなくてはならない。」
(早稲田大学入学式における村上春樹氏の祝辞趣旨より)
新年度となって、初登庁・初出社などのニュースを多く目にした。早朝から先月卒業したゼミの卒業生に、お祝いのメッセージを送る。各自がどんな気持ちでそれぞれの職場に赴いたであろうか。たった1日の違いであるが、この日から先月とは違う顔になったわけだ。既に立派な社会人であり教師なのである。巣立った鳥の翔ぶ空までは行けないが、気になるのが親心。メッセージを送ったことで「平常心を取り戻せた」という趣旨の返信に喜びを覚えた。自らの研究や教育がどれほど社会に貢献しているか?それはこの卒業生たちの活躍が証明してくれるように思う。多くの資材となる力を持たせて、大きな空に羽ばたかせたのである。
夕刻のTVニュースで、母校の入学式の光景を観た。特に出身学部の式には卒業生でもある村上春樹氏が登壇、祝辞を述べたと知った。映像ではなくニュースがその趣旨を文字で流したものだが、冒頭に記したようなことを村上氏は述べたと云う。僕の前述した思いに重ねるならば、「健全な社会に必要な短歌を持たせた人材を社会に送り出した」ことになる。また村上氏は「古代から『文学』という松明を次の人に手渡し続けてきた」という趣旨のことを述べた。僕もまた「自らの手にする松明の火をゼミ生らに手渡した」ことになる。最新式の聖火トーチは消えない技術で造られようが、「文学の松明」は2020年を迎えた今、社会にかき消されるかもしれない危機にある。しかし僕らは諦めない、ゼミ生らにも手渡した松明の炎を燃やし続けたい。宮崎ならば特に、煌々と燃える松明の火を信じて。
松明を持った卒業生らの活躍を祈念し
新年度もまた学生らの心に火を灯す
まずは足元の「短歌県みやざき」が明るくなるために。
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