「短歌でしか表現できないこと」第341回心の花宮崎歌会
2019-11-03
『心の花』編集部から田中拓也さんをお迎えし「『心の花』と私」の講話と歌評をいただく
結社ならではの充実した1日が宮崎で
歌誌『心の花』編集部から地方歌会への派遣事業が本年から始まり、田中拓也さんが宮崎へといらっしゃった。午前中には、宮崎大学を会場に「短歌の授業づくり」と題した講話とワークショップが実施され、一般の方や学生まで約20名の方々が参加した。僕自身は校務で附属学校園での式典に参列する予定があり、主に宮崎大学短歌会の学生たちが運営に当たった。本年『心の花』の5月合7月号で「短歌の継承ー短歌と教育」が特集されたように、現職教員が歌人として活動し短歌を児童生徒に継承していく責務は大きいように思われる。また教員という職業は短歌に向き合う知性や感性が発揮でき、学校という交流の場での人生を活写することができる特権があるとも思う。宮崎のさらに多くの先生方が、短歌に向き合う契機となればと願う。
心の花宮崎歌会は夜6時に開会し、冒頭の30分で田中さんから「『心の花』と私」の講話。高校生の頃の短歌の出会いから、「心の花」でどのように歌や歌人の方々と出会ったかを、短歌を引きながら実にリアルに話していただいた。あらためて心の花歌人の方々の多様さ層の厚さを思うとともに、いかに短歌に向き合う人生を送るかというモデルが示されたようでもあった。「短歌でしかできないことを歌うんだ。」「一人に千回読まれる短歌」など佐佐木幸綱先生や、「短歌を作る時間帯を変えると短歌の内容まで変わるんだ。」という伊藤一彦先生らから田中さんが得られた言葉の紹介もあり、宮崎の会員諸氏にとっても大きな気づきとなる内容であった。歌会は49首出詠、互選票の多い歌から批評が開始されていく中で田中さんの主題や表現構造を視点とした評が新鮮であった。特に宮崎歌会の特徴として挙げていただいたのは、「文末(結句)表現の工夫が多い」「様々な主題(素材)が詠まれている」「固有名詞が少ない」というご指摘であった。また「コンビニ」という素材の扱いの難しさや、ネットを使用しないで歌評する歌会の試みの紹介もあり、歌会とは歌評とは何か?という命題を考える意味でも貴重な機会となった。
歌会後は恒例の懇親会
さらに深く歌の奥行きを探った
「宮崎でしかできないこと」も悟った宵のうち
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