「全力」とか「ワンチーム」とか云って
2019-11-02
「全力で取り組む」「ワンチームで対応する」
やたらと耳にするこのあたりの言葉
台風の大きな被害が東日本での長引く生活の不安をもたらせている中で、沖縄の首里城の火災による損出は映像を見るに耐えないほど悲痛な出来事であった。首里城には自らの高校時代の修学旅行をはじめとして、高校教員になってからの引率を含めて5回は足を運んでいると思う。その都度、守礼の門から上る坂道の空気感の独特さと和漢双方の文化の融合美があって誠に愛すべき心に残る名勝であった。映画の1シーンかと見紛うような炎上と崩落の映像には、思わず声を上げてしまった。しかし、なぜこのような大規模とも言える災難が続くのだろうか?かたや五輪マラソン・競歩の会場変更や大学入試英語民間試験導入見送りなど、国の根幹に関わることで直前で撤回に至る喧騒が絶えない。
前述したどの事態においても、報道を見ていると「全力で取り組む」という表現を耳にする。この「全力」が誠に胡散臭く気になっている。言葉尻といえばそれまでだが、では特段に「全力」と言い放つからには、通常は「全力」ではなかったのかと突っ込みたくなるのである。全力でないなら「片手間」に行われていたから、不測の事態に及んだのかとも聞こえてくるのは穿った見方であろうか。同様にラグビーなどスポーツの影響もあろう、「ワンチームで対応する」という表現も気になる。少し前までは「一丸となって」であったが、多様性を尊重する社会の中で誤解も招きかねない。もちろん協調性・協働性が社会に大切なのは基本であるのだが、ことさら騒動が起きた際につけて語られる「ワンチーム」は、それまでは協調も融和もしていなかったのかと思ってしまうのだ。いずれにしてもこの落ち着きのない大難の連続は、何か異様な社会の方向性を暗示してはいないかと甚だ心配になるのであるが・・・。
五輪のマラソン・競歩の選手たちはいま
そして大学入試を受ける高校生たちはいま
当事者たちこそは日常から「全力」であるはずなのだが・・・
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