口をついて出ることばから
2018-07-23
「この響きを聞いてくれ」から意味や整頓は最後の最後にやって来る
口をついて出る「出鱈目歌詞」の大切さ
幼少の頃から「出鱈目ことば」を思い浮かべるのが好きだった。学級で仲相入れない者がいると、自己の中で何らかの「あだ名」をつけてしまい、決して口外せずその皮肉的な「あだ名」を心の中で呼ぶことで精神浄化を図っていたような作用である。それは大人として中高教員となってからも似たような作用が働き、ほぼ僕の内では「自家版坊っちゃん」が書けるのではないかと思うほど、過去の体験をモデルにしたキャストの命名は完了している。理解深い共同生活者などがいれば、日常で起こる些細な事象をやはり出鱈目な曲にしてしまうこともあった。例えば、毎朝恒例で自宅マンション前を通る見知らぬ人の犬に名前をつけ、その犬のテーマ曲のサビ部分を創ってしまい発見する度に唄うというような、たわいもない所業に遊んでいたわけである。
40周年記念の年に大好きなサザンオールスターズに関して更に深く知りたいと、スージー鈴木氏の『サザンオールスターズ 1978年ー1985年』(新潮新書2017)を読んだ。ほぼ同年代で同窓のスージー氏が書くことは、僕自身の「サザン体験史」とも重なる部分があって、共感の度合いが高い。その中に桑田さんがタモリさんの「今夜は最高」の第2回に出演した際の秘話が紹介されている。その概要は、タモリさんがサザンの音楽について「歌詞がわかんない」ことに賛辞を送る。それに対してボーカルが早口であることに桑田さんが「メロディを生かしたいとか、この響きを聞いてくれと思う時に、むりやり日本語に乗せるとそう聞こえてしまう。」と反応。タモさんが「歌詞に意味ってないほうがいいってことだね」と言うと、桑田さんが「メロディ浮かべて、そのとき口から出た、タでもホでもいい、ダバダバウンガッガ、バババのドッドッでもいいし、つまりそれが歌になってればいい」と返したと云う。(同署P103)納得、メロディを先に創り歌詞を流し込むと聞いていた桑田さんの曲作りのあり方が、このエピソードで具体的に鮮明になった。サザンの初期活動の足跡を、現代の眼で問い直す好著である。
「口から出まかせ」を拾うと云うこと
身体から湧き出て来ることばを捉える感性
研究・評論・創作という様々な所業は、自らの「不思議さ」を解明するものかもしれない。
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