生きて動いているうちは苦労するー桂歌丸さんを悼む
2018-07-03
桂歌丸さん享年81歳笑点のみならず新宿末廣亭などでも
心よりご冥福をお祈り申しあげます。
桂歌丸さんが享年81歳で逝去された。笑点の司会であまりにも有名になったが、その芸のこだわりは実に奥深いものがあった。東京在住時はよく新年などに新宿末廣亭などを冷やかしに行っていたが、たいていそのトリが歌丸さん。独特の間があるゆったりとした語り口調、聴衆を自然と惹き込む語りの内容には笑点のみではわからない噺家としての矜恃が感じられた。笑点で司会者になる前はメンバーの中核をなす存在で、お題が出されるとまず最初に手を挙げ、古典的な季節観や人情味に溢れる”綺麗な答え”を示し、笑点が単なる「お笑い」ではない存在証明をしていたように思う。今や、この「歌さんの綺麗な答え」を継承できているメンバーは皆無だ。
昨日、TVニュースでの訃報で次のような最近のインタビュー場面が取り上げられていた。呼吸系の病が重くなってからも、人工呼吸器などを装着して高座に上がり続けた。自分の落語は自分にしかできないものでありたいと、高座に上がる際は心がけているのだと云う。「生きて動いてるうちは苦労するね」と答える歌丸さんにインタビュアーが、「楽したくはないのですか?」と問いかけると、「楽するときは目を瞑ったときだよ」と笑顔の「下げ」をふりまいていた。今年の春先までは高座に上がり続けていた歌丸さん、まさにその言葉通りに亡くなるまで噺家であり続けたわけである。呼吸器系の病いということは、噺を語る上でも他人には決してわからない苦しさがあったはずだ。歌丸さん、どうぞ天国では楽に高座に上がっていただきたいと思います。
生きることを賭した芸人魂
人生は楽をするためにはあらず
最期まで信念を貫く生き方でありたいものである。
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